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重心が低く、小型選手の特色を出した若い遠藤康のプレー

2010/03/12(金)

――J開幕、ACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)などで目についたことはありましたか?

賀川:たくさんあったヨ。まあその一つは、鹿島遠藤康(えんどう・やすし)だネ。

――ACLの対全北現代(9日、全州ワールドカップスタジアム)で決勝ゴールを決めた小柄な選手ですね。1988年4月7日生まれだから、もうすぐ22歳になる若い選手。

賀川:74年西ドイツ・ワールドカップ(W杯)のマスコットは、Tip&Tap(チップ・アンド・タップ)という2人の選手の格好をした人形だった。すらりとしたのと、ずんぐりした選手がドイツ代表の白ユニフォーム、黒パンツを着用していた。

――すらりとしたのがフランツ・ベッケンバウアーをモデルにしたもの、ずんぐりがゲルト・ミュラーのタイプといわれていたそうですね。

賀川:サッカー選手はずんぐり型とスラリ型、別のいい方をすれば長身もあれば短身もあるということだろうネ。

――遠藤はその小さい方の……

賀川:日本人は体格が小さいのを気にしている。といえば、ボクのような小柄な者がいうとオヤというかもしれないが、小さいということは欠点ではなく特徴なんですヨ。ノッポは長所というよりこれも背が高いという特色であるだけ。もちろん、いつも言っているように、ノッポの方が適したポジションもある。しかし短身の方が有利な場所や局面もある。

――遠藤クンのいいところは?

賀川:腰が低く重心が安定している。体がしっかりしていてバランスがいい。もちろん、Jの選手だから少年時代からボールに慣れ、適当な指導を受けて鹿島へ入ったハズだ。
 テレビで見ただけだが、ボールをちゃんと止められるし、左足で強いキックができる。ACLの全北現代戦で奪った決勝ゴールは、ゴール前へ走り上がってパスを受けて、右足のサイドキックで流し込むように相手GKの左(GKの右手側)を抜いた。
 見どころは滑りやすいピッチを駆け上がってボールを受け、小さなステップを踏み体勢を保ちながらトラップからシュートへ持っていった、バランスの良さとゴール前での度胸だね。

――平山相太や大迫勇也のような長身FWの成長を望む発言の多い賀川さんが、小型・遠藤康を誉めるとは……

賀川:70年W杯の得点王で、いまも点を取ることでは歴史的にも上の方だといわれているゲルト・ミュラーは身長1メートル75で、もちろん遠藤クンより大きいが、ドイツ人の中では大きくない方。そして彼の特徴は、胴長短足の体つきだ。ドイツ人は背が高くて足が長く、いわゆるカッコイイ青年が多いのだが、彼はずんぐりに見えて胴長。ただしこれが彼の重心の安定と彼特有の反転シュートなどにつながるプレーに生きているのですヨ。

――そういえば、ディエゴ・マラドーナの話にも、彼自身が小さいから自分のプレーがあるというような言葉がありますね。

賀川:マラドーナは、彼独特のボールタッチの精妙さがあって、この特色を発揮できる小さくても強い体があった。バルセロナリオネル・メッシもそうだ。
 このクラスまでゆくかどうかはともかく、遠藤クンはそういう“小さな大選手”と同じ小さく強くバランスのいい体を備えている。開幕の浦和戦でも後半に出てきて、1本いいドリブルシュートをしたのを見て、「これは」と見ていたら、終了近くに左サイドのスローインを受けて中央へライナーのクロスを送ってマルキーニョスのヘディングシュートの決勝ゴールを生みもした。これも、彼の短い足での素早いスイングからのキックができるからですヨ。まだまだ伸びるでしょう。もちろん、技術アップをさらに努力してほしい。

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