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オランダ遠征2試合を見て(3)

2009/09/27(日)

~得点への意欲が強まり、第2戦でそれがスコアに表れたのは何より。憲剛をはじめイレブンのレベルアップへの努力に期待~


――Jリーグの得点ランキングで、今年はともかく、ずーっと外国人が10位までのほとんどを占めていました。

賀川:今年、日本選手の名が増えてきたのは良いことですヨ。一番大切なのは、日本人はストライカーに向いていないなどと決めてしまうことだ。

――でも、外国の多くのストライカーは少年期からすでに頭角を現している人が多いでしょう?

賀川:私がいまサッカーマガジンで連載している「我が心のゴールハンター ~ストライカーの記憶~」で取り上げている世界のトップクラスは、それぞれ特色はあっても、たいてい少年期からストライカーとして注目されていたことは確かだネ。

――とすれば、いまの日本には……

賀川:確かに、釜本邦茂に比べると中村憲剛はストライカーとしての素材の上では見劣りするかもしれない。しかし、彼のように広く動いて守りも懸命にこなし、中盤でもゴール前でもいいパスを出し、しかもここというチャンスのポイントへ走り込んでゆく選手はこれもまたストライカーとしての大きな素質ですヨ。

――せっかく、そのいい位置へ入ってボールを受けても、そこでシュートに失敗してはね。

賀川:そう、しかしその位置へ入り込んでシュートを決めることができなくても、彼はまたそこへ攻め込んで点を取りに行っている。そのことが一番大切なんですヨ。

――ゴールへの意欲ですか。

賀川:意欲があれば練習をする。いまの日本選手の多くは少年期にボールを蹴っている回数が少ないようにみえる。憲剛も年齢からいけばもっと早くにシュートの型を身につけておくべきだったが、技術というものは年齢(とし)をとってからでも上達し、試合に間に合うものです。私は1990年のW杯でドイツのローター・マテウス(主将)が左ですごいシュートをするのを見、驚いたことがある。彼が後に語ったところによると、バイエルン・ミュンヘンからイタリアへ移ってから左で蹴ることを練習し、上達したと言っていた。

――へぇー、そういうこともあるわけだ。キックやヘディングの上達は練習の回数に比例するといいますね。

賀川:いい位置へ上がって点を取れなかったときの悔しさは、中村憲剛は身にしみているハズで、だからこそ練習を積んでいるのだと思う。最近サッカーマガジンで大分ウェズレイの話を読んだが、彼は名古屋時代からずっと体の使い方やボールの押さえ方など注目していたプレーヤーだった。彼の話によると、ウェズレイはもともとブラジルではMF、ボランチだったらしい。日本でFWをやれと言われて、点取り屋になったということですヨ。いわばプレーヤーとして若いときからストライカーであったのでなくて、経験を重ねてからポジションが変わり、自分の仕事としてポジションプレーに取り組んだということ。それが外国人として100得点の記録となった。

――そういえば、川崎フロンターレジュニーニョにも同じ話がありましたね。

賀川:彼はパスが上手い。組み立てやドリブルに特徴があるとされていたが、やはり得点しようとシュート練習を繰り返してきたし、いまも続けているそうだヨ。
 だから大切なのはゴールへの意欲、シュートの練習で、このことに気付いてもっと練習すれば成果はあがるはずです。

――オランダ戦でノーゴール、ガーナ戦でも45分は無得点だった日本の遠征シリーズ最初のゴールが、中村憲剛の走り上がってのシュートでしたね。

賀川:この試合でも、前半に惜しいチャンスを失敗したが、それにもくじけずにゴールを目指したところがいい。当然、こういうノッているときは失敗についても反省し、工夫し、練習するものですヨ。

――皆が憲剛のようにひたむきに――ということですね。

賀川:これから半年間、もちろんW杯本大会まで短いようで長くもあるから、コンディショニングは充分考えなくてはいけないけれど、自分の技術や体力の向上を個人が心がければ、自身もそうだしチーム全体も伸びる。

――長友佑都の対ガーナ戦、後半の動きはすごかったですからね。

賀川:体力があるのは本人も自分の特色と思っているハズ。サイドの選手というのはそうでなくてはね。イケると見て積極的に突っかけていった。チーム2点目の玉田圭司のシュートは彼のパスからだった。もっとも、相手がフラフラであまりにも上手くゆきすぎた感はあるが……。それも気迫、意欲のおかげですヨ。



【つづく】

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