日本代表 vs カタール代表(2)
――位置は左寄りからですね。
賀川:ハーフライン手前、日本側エンドで左タッチライン寄り10メートルくらい内だった。内へドリブルした憲剛の右、センターサークル中央近くに中村俊輔がいた。憲剛からパスを受けた俊輔はうまいトラップとターンで相手をかわして前へ向いた。記者席から見ていて、俊輔のピポット・ターンに思わず「ウマイ」と叫んでしまった。
――そんなにうまかった。
賀川:中村憲剛のパスが、むしろ俊輔が欲しかった位置より後ろ目に来たのだが、俊輔は左足を伸ばして彼の長い左足のリーチでこのボールを止めた――というより、自分の方へ引き寄せ、相手が一人接近するのを見ながら実に簡単に前へ向いた。
――この場面は、もし好きな方があればビデオでご覧になって下さい――というところですね。
賀川:そうだね。ジネディーヌ・ジダンというフランスのスターは、あの大きな体でのピポット・ターンが有名だが、俊輔のこのときのターンもまた大したものだ。
ターンをして、そのまま左足で右オープンスペースへグラウンダーのパスをした。ボールを受ける前からノーマークの大きなスペースがあり、内田篤人にここでプレーさせようと考えていたのだろう。スタンドの記者席から見て、少しパスのスピードが遅く、内田が取れるかどうかと見えたが、タシケントで体調を崩し、スタジアムにもゆかずに静養したという内田は元気でスピードを上げて走り、DFのスライディングよりも早くボールを取って縦にドリブルし、ペナルティエリア右外ギリギリで中央へライナーのクロスパスを送った。
――そこへ岡崎慎司が走り込んできた。
賀川:岡崎は日本側エンドでのボールの取り合いに加わって、右足ボレーで叩いて憲剛にボールを渡した後、すぐ前方へ走り出し、左サイドから斜め右、ペナルティエリア中央へ入ってきた。記者席からは、彼が相手の一人とコース取りしながらニアポスト側へ走り寄ってきたところへ、内田からのライナーのクロスが来た。それが岡崎でなく、アハメド・アリ・F・A・アルビナリの体、腹部のあたりに当たってゴールに入った。
――テレビではGKカセム・ブルハンの位置が前に出たように見えました。
賀川:あとでビデオを見ると、カセム・ブルハンは前へ出てクロスを自分で取ろうとしたようだ。だからニアポスト側があいて、アルビナリに当たったボールが入ってしまった。
――岡崎の走り込みも効いたのかな。
賀川:もちろん、オウンゴールだが、内田と岡崎にアシストをつけたいところだネ。ペナルティエリア中央にかかるあたりで左から斜めに走ってきた岡崎がいったんニアに出ようとしたのを、アルビナリが体を寄せて(おそらく腕を使って)押し返しながら併走した。岡崎は粘っこい体だからこういう密着、あるいは絡んでのプレーでそう簡単に譲らないから、何秒間か2人は絡んで併走してきた。そこへ右サイドから速いボールが来た。アルビナリは左手側で岡崎を押さえながら、だから右からお腹の高さに来るボールを足で処理できず、体に当ててしまった。
次の日の朝日新聞(大阪版スポーツ面)の写真を見ると、彼が左手で岡崎の右腕のシャツを握っているところをバッチリ捉えている。おそらく左手で岡崎の動きを封じていたものだから、体の向きを変えられなかった(体でボールをポストの外へはじくことができなかった)のだろう。ニアサイドへ飛び込むのを得意とする岡崎のニアへの執念が生んだオウンゴールだと言える。
【つづく】
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