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オーストラリア相手にチャンスをつくった。決定的な形もあった。それで得点できないのには、不運だけではなく理由がある

2009/02/18(水)

2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ アジア最終予選
2009年2月11日(横浜・横浜国際)19:20
日本代表 0(0-0 0-0)0 オーストラリア代表

【日本代表メンバー】
GK: 18都築龍太
DF: 15長友佑都、4田中マルクス闘莉王、2中澤佑二(Cap.)6内田篤人
MF: 7遠藤保仁、17長谷部誠、8松井大輔→16大久保嘉人(57分)10中村俊輔
FW: 11玉田圭司、田中達也→13岡崎慎司(83分)
SUB:1川島永嗣、3寺田周平、5今野泰幸、14橋本英郎、12巻誠一郎

【オーストラリア代表メンバー】
GK: 1マーク・シュウォルツァー
DF: 2ルーカス・ニール(Cap.)3クレイグ・ムーア、
MF: 4ティム・ケーヒル→9ジョシュア・ケネディ(85分)5ジェイソン・カリナ、8ルーク・ウィルクシャー、11スコット・チッパーフィールド、13ビンチェンツォ・グレラ、16カール・ヴァレリ、18マーク・ブレシアーノ→10デービッド・カーネイ(92分)
FW: 14ブレット・ホルマン→7リチャード・ガルシア(64分)
SUB:12マイケル・ペトコヴィッチ、15ジェイド・ノース、6マイケル・ジェディナク、17スコット・マクドナルド

――0-0、残念でしたね。

賀川:いい試合だった。オーストラリアはアウェーで引き分けたのだから満足だったろう。日本が勝てなかったのは残念なことだが、私は、日本対オーストラリアというカードが、日韓戦とはまた別の新しいアジアのビッグカードとなったのは両国のためにもアジアのためにもとてもいいことだと思っている。スタジアムを6万5,000余りの観客が埋め、テレビでもたくさんの人が見たのだから。

――テレビ朝日の中継放送の視聴率は22.9%といいます。

賀川:プロ野球が、本来ならシーズンオフなのにワールドベースクラシック(WBC)と称する国際大会で話題づくりができるようになってきた。大リーグで活躍する選手たちも日本代表に入って、注目度も高くなっている。そうしたときに、ワールドカップ(W杯)のアジア予選の、それも第1クールでこれだけ盛り上がっているのだから……

――大きな目で見ればそうも言えますね。

賀川:イビチャ・オシムという、日本のメディアの間で信仰に近い人気を持っていた監督が病に倒れたあと日本人の岡田武史監督に代わって、1年少々の間にチームは徐々に変化して力もついてきた。そのことを、今度の対オーストラリアで見せたと思う。

――オーストラリアのピム・ファーベーク監督は、日本がよく動くこと、パスワークがいいこと、早いことなどは全て想定内だったと言っています。

賀川:危機感を盛り上げることで団結してゆこうという日本側と、1週間前からやって来て内外に聞こえるように“自信満々”と言いふらして弱味を見せまいとする相手側との対比も面白かったネ。双方とも“度”が過ぎると見た人もあるだろうし、適当だったと見る人もあるだろう。そういう中で日本代表が少しずつ進化してゆくのが大事なことです。

――日本のシュートは11、相手は3。

賀川:イングランドのプレミアリーグでも得点しているティム・ケーヒルエバートン)、あの4番をつけて最先端にいたスリムな選手を中澤佑二が完封した。闘莉王との協力も良かった。1本、フリーにして中距離シュートされる場面もあったがGK都築龍太の正面だった。
 相手は守りを重視してまず無失点に、チャンスがあれば攻撃に出て点を取ろう――と。そのときの中心になるのがケーヒルで、その彼に仕事をさせなかったのだから。

――3本のシュートのうち、もう1本はノッポのムーアのヘディングでした。

賀川:前半42分に、右CKからのプレーだった。もう1本は後半(84分)の、ブレシアーノのFK(オーバー)。
 前半はじめに日本が攻めてチャンスが続いたあと、しばらくオーストラリアのプレッシングが効いて日本が受け身になる時間があったが、それ以外は日本側がコントロールした。

――何が良かったのでしょう。

賀川:点を取りにゆこう、という意欲が強いこと。そして、サイドへ散らして外から、あるいは中央部を――と、色々なテを使ったこと。もちろん、一人ひとりの技術の高さやスピードもある。その典型的なのが前半5分の玉田圭司のシュートだった。

――田中達也が相手バックラインの裏へ走ったチャンスでした。

賀川:右サイドの中村俊輔から中央やや右寄りの玉田の足元へパスが出て、玉田は戻りながら長谷部誠へバックパス。このとき中央左寄り前方にいた田中達也が右斜め前へ走り出す。長谷部が、玉田からのバックパスがバウンドしたのを高い位置のボレーでとらえてポーンとバックラインの裏へ送り込んだ。
 バウンドしたボールをダイレクトで蹴ったのが長谷部のうまいところで、田中はオフサイドにならず全くノーマークで走り抜けてゴールライン近くからよく狙ってスピードを殺したクロスを送った。玉田が足の速さを見せつけて相手DFのニアで取り、シュートは右ポストの外へはずれた。左利きの彼らしく、右から来るボールを左足でタッチしてニアサイドを突くつもりだったのだろうが、そうはゆかなかった。田中達也にボールが渡ったところまではパーフェクトだったが…。

――これが決まっていれば、ずいぶん変わった展開になったでしょうね。

賀川:この3分後に、今度は内田篤人がゴールエリア左外へ走り込んでパスを受けるというすごい場面もあった。内田が右から中央部へドリブルし、遠藤保仁に渡して、そのまま中へ走り込む遠藤から玉田へ。玉田はそれを内田へ送った。相手は一人ついてきたが、少し遅れていた。
 私は内田のシュートチャンスと見たが、彼はキープし、後方の松井大輔にパス。松井のシュートは相手に当たってゴールへ届かなかった。

――これも、エリア内に侵入してボールを受けるところまでは良かったと?

賀川:この、5分と8分の2つの相手DFラインの裏へ走り込んでのチャンスづくりは、おそらく、攻めの動きのパターンのうちに入っているハズで、練習していたものだと思う。ただし、この形になったときに決定的な場所でボールを受けた者が何をするかが最重要ポイントとなる。玉田がニアへ走り込んだとき、右足でボールを叩くか、左足でタッチするのか。内田がゴールエリア左外へ走り込んでボールを受け、左足でシュートするのか、ダイレクトで誰かにパスをするのか。それがゴールになるかどうかなのだと思う。

――2つのチャンスが、今の日本代表チームの性格を表している?

賀川:今の日本代表というより、ここ何年かの日本代表。というより日本選手のスタイルだね。実に見事にパスを組み立て、決定的な瞬間を迎えるが、フィニッシュは成功しない。

――内田は、14分にこぼれ球をロングシュートして超オーバーしました。

賀川:たしか、玉田のドリブルから生まれたFKのあとだった。相手DFのヘッドのクリアが中央にいた内田のところへ来たのだが、大きなバウンドにスイングが合わず、ボカーンと蹴ってしまった。落ち着いて処理してから蹴っても良かった。早いうちに蹴っておけ――ということになっていたのかも知れないが。

――前半、玉田がエリアぎりぎりあたりからのシュートを浮かせてしまいましたね。

賀川:右サイドからの内田のパスを、長谷部がジャンプしてヘッドだったか胸だったかで後ろへ落とした。玉田が走り上がって左足でシュートしたが、高く上がってバーを越えた。少し難しいボールだったが、近くに相手がいたわけでもないのだから落ち着いて処理すれば良かった。ビデオのリピートを見ると、バウンドボールの2つ目をショートバウンドで押さえようとしたのが少し遅れたために上がってしまったのだろう。彼は左でのボレーを好む方だが、自分の一番いい形でシュートすることはストライカーの要件の一つだと思う。ドリブルや俊足での突破などで相手に脅威を与えることのできるFWだから、このフィニッシュがもう一つステップアップすれば――と、誰もが思っている。

――彼は後半にも惜しいヘディングがありました。

賀川:長友佑都の左からのクロスに飛び込んだ、79分のチャンスだネ。比較的近い距離からの早いボールだったから、玉田には難しいボールだったかもしれない。ただし、この長友―玉田のプレーを、互いに、どのボールをくれ、どのボールを出すからという連係の極意というか、あうんの呼吸で演じるのがサッカーの面白さだから――。
 今ここで言うと、迷う選手も出てくるかもしれないが、この試合では攻撃のこういうときのテンポが“急”ばかりで、合わせるポイントは「一つだけ」、というサッカーをやっているところにゴールを奪う難しさがあったともいえる。

――「緩」と「急」についてはまたの機会にして……。
 後半の玉田のシュートの少し前に、遠藤がすごいシュートを見せましたね。GKマーク・シュウォルツァーが防いでCKになりました。

賀川:そうそう。後半に入って、57分(後半12分)に松井に代わって大久保嘉人が登場した。MFの左サイド、松井と同じポジションだが、当然、彼はゴール前にも現れる。玉田や田中達也との連動も楽しみになる。
 その大久保が、68分に右ポスト際で反転してシュートをした場面があった。左足のシュートは弱くて、GKシュウォルツァーがキャッチした。
 そのあと、今度は70分に遠藤がペナルティエリア外からシュートした。GKに防がれたが、いいシュートだった。これは、左から遠藤が大きく振って内田へボールを送り、内田が余裕をもってキープしている間に中央へ遠藤が入り込み、内田から横パスをもらってダイレクトシュートしたのだった。2人による長い横のワンツーからのシュートだった。
 遠藤と内田という柔らかいプレーをする2人の合作チャンス。いいシュートだったが、もう少しどこを狙うかを決めて欲しかったネ。何といっても遠藤だから……。

――テレビを見ていて、岡田監督が一番口惜しがったのは86分の長谷部のシュートでしたね。

賀川:クロスを上げても長身の相手DFに跳ね返される。CKやFKも成功しないという流れが、この頃になるとオーストラリア側の動きが鈍ってきて、クロスに対してもGKとDFが重なったり、シュウォルツァーのパンチがペナルティエリア内に落ちたり――といった守りの乱れも出始めていた。
 これだけ攻められれば、徐々に綻(ほころ)びるのはどこも同じだと見ていたとき、相手の攻撃でのFKを防いだあと、大久保が中央で拾い中村俊輔に渡し、俊輔のドリブルでカウンターが始まった。その俊輔から右サイドの内田にボールが出て、内田がクロスをファーに送った。落下点には長谷部がいて、相手のDFの上を越えて落ちてくるボールをボレーで叩いた。シュートはゴール前へ飛んだが、ゴール正面にいた大久保に当たって左ポスト外へ出てしまった。
 相手に攻め込まれたあとのカウンターから、中村俊輔のドリブルと内田へのパスの間にゴール前へ大久保と長谷部も走り込んで、その長谷部がファーポスト側にいてノーマークでシュートするという理想的な形だったが……。

――大久保に当たったのが不運だったでしょうか。

賀川:なぜ大久保に当たったか。大久保はどう反応すればゴールインになったのかも考えることになるだろうし、また、ボレーを押さえてゴロのシュートにしたのがいいのか、ライナーあるいは高い強い球を蹴るのがいいのか。これからはそこまで考えたり議論したりすることになるだろうし、なって欲しい。

――チャンスがなぜ点にならないかを――ですね。

賀川:ストライカーという人種は、点が取れなかったことをくよくよ思わないそうだが、それは、1試合に1点ずつ、あるいは60試合で50得点といったクラスの話だろう。そこへゆくまでは、“何故”入らなかったか――を考え、点を取るための練習をするハズだ。

――チームは良くなっていると言いましたね。

賀川:例えば内田篤人。キリンチャレンジカップのあとで、内田がチャンスを生むパスを出せるようになってきたと語り合ったでしょう。この日も彼からいいパスが出た。だから右サイドの攻めに変化が出て、多彩になった。

――FK、CKが得点に結びつきませんでしたが……

賀川:中村俊輔のFK、CKはいつも期待を持たせてくれるが、この試合では得点にならなかった。それでも、彼のきめ細かいパスの技は堪能できた。

――例えば?

賀川:前半に長谷部がペナルティエリアの右のラインに走り込んで、俊輔からのパスを受けてチャンスを作った場面があった。俊輔は相手DF2人を前にして、顔は中央に向け、ボールは左足で小さく浮かせてDFが伸ばした足の上を通して長谷部にボールを渡している。これはビデオのリプレーでも映っているから、多くの選手の参考になるだろうが、彼のこうした熟練の技と各選手のランでチャンスづくりのバリエーションは先述のとおりどんどん増えている。

――あとはシュート練習だけですね。

賀川:そう、シュートですヨ。シュート場面で冷静に、正確に蹴れる。処理する選手になるということだが、もう一つ、シュートの場面とタイミングのつくり方もある。これについては、また別の機会にしよう。

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