2010FIFAワールドカップ アジア最終予選
10月15日(埼玉スタジアム2002)19:32
日本代表 1(1-1 0-0)1 ウズベキスタン代表
得点者:シャツキフ(ウ 27分)玉田(日 40分)
【日本代表メンバー】
GK: 18楢崎正剛
DF: 6阿部勇樹、4田中マルクス闘莉王、2中澤佑二(Cap.)15内田篤人
MF: 7遠藤保仁、17長谷部誠、13香川真司→8稲本潤一(76分)10中村俊輔
FW: 16大久保嘉人→12岡崎慎司(62分)11玉田圭司→13興梠慎三(81分)
SUB:1川口能活、5高木和道、3駒野友一、14中村憲剛
【ウズベキスタン代表メンバー】
GK: 12イグナチー・ネステロフ
DF: 2アンズル・イスマイロフ、5アスロル・アリクロフ、11アンバル・ガフロフ
MF: 14ビタリー・デニソフ、9オディル・アフメドフ→アジズベク・ハイダロフ(72分)18チムル・カパーゼ、10イルダル・マグデーエフ→ルスラン・メルジジノフ(57分)6ジャスル・ハサノフ、8セルベル・ジェパロフ
FW: 16マクシム・シャツキフ(Cap.)→アレクサンデル・ゲインリフ(72分)
SUB:1ガイラトジョン・ハサノフ、3ヒクマトジョン・ホシモフ、4サホブ・ジュラエフ、13バギス・ガリウリン
試合前の両チームと、バックスタンドのサポーターによる日の丸
――84歳になって、芦屋から埼玉スタジアムへ出かけるのは大変でしょう。
賀川:今度はインターネットの路線検索で予定表をつくり、それに従ったのでとても楽だった。15日夜に宿泊する東京のホテルにはチェックインは夜の12時を過ぎると連絡しておいて、東京駅からJRの京浜東北線の大宮行き快速に乗り王子で降りて改札を出て、地下鉄の「東京メトロ南北線(普通)浦和美園行き」に乗った。プリントアウトした予定表どおり王子駅15時33分着、地下鉄の駅で15時38分の電車が入ってきた。
――地下鉄は座れましたか
賀川:浦和美園駅着が16時05分、キックオフの3時間以上前の電車でも王子駅で満席だった。観戦の人たちも乗っていた。そのうちの若い人が私に席を譲って下さった。しばらくして隣の席が空いて、その方も座ったので少し話をした。自分がプレーするのは野球で、日本代表のサッカーをナマで見るのは初めてとのことだった。美園駅で別れるときに、「初の日本代表を楽しんで下さい」と言った。そのあとについ、よけいな一言をつけ加えた。
――何と?
賀川:楽しいだけでなくイライラするかもネ――と。もう一人、かなりのサッカー通(つう)らしいその人の連れがフッフッと笑ったが……
和田アキ子さんの「君が代」は、堂々たる歌いぶりが場内スクリーンでも映し出された
――試合はそのとおりイライラした……
賀川:キックオフ直後から日本の選手たちがスリップしてバランスを崩し、ミスが多かった。関西は前の日に雨だったが、埼玉のピッチはこんなに水はけが悪かったカナと思ったほどだ。
――日本の早いパス回しに合うように、芝の長さを22ミリに短くして、水をまいたとか……
賀川:そうらしい。ところが、その自分たちに合わせたハズのピッチで滑ってバランスを崩したところへ、相手側がはじめからプレスをかけてきた。
――試合後の記者会見で、これまでのウズベキスタンはそういう試合ぶりではなかったから予定外だという話も出たそうですネ
賀川:ウズベキスタンのクラブ(クルブチ)の監督となったジーコ(元日本代表監督)のアドバイスがあったということだが、ジーコでなくて日本が中盤のプレッシングに弱いことは、どこも知っているだろう。早いうちからのプレッシングは体力がどこまで持つかということもあるのだが、気候が涼しくなってきたからウズベキスタンにも好都合だった。
――かなり激しく体をぶつけてきた
賀川:はじめのうち、そういう条件が重なってミスも多く、見る側にもイライラはあった。
――27分に先制されました
賀川:高いボールを田中マルクス闘莉王がボレーで蹴って、それがミスキックで高く上がって落下するのを、イルダル・マグデーエフが中央右寄りで前方へヘディングした。これをチムル・カパーゼが取って日本のゴール前を斜めに横切る早いボールを送り、長身のストライカー、マクシム・シャツキフが左足に当てて先制ゴールを奪った。
蹴り損なったボールが高く上がって、そのヘディングからアッという間の出来事だった。
――それでも前半のうちに同点ゴールを取った!!
賀川:中村俊輔が執拗にマークされ、何度もファウルで倒された。それでもやはり、見事なスルーパスを送ってチャンスをつくっていた。香川真司がゴールエリア右角辺りに走り込んでいいパスをもらって反転シュートしたが、くっついてきたDFに当たった。ああいうところでの“間”(ま)の使い方を覚えるといいんだが……。
内田篤人も、右から相手ウラへ走り込んでゴール近くまで行った。パスを出したが、シュートをして欲しかった。
――香川が走り込んで取れなかったチャンス?
賀川:彼ともう一人入ったが、オフサイドのポジションだった。ああいう形の練習をしたのだろうが、ボールを持ち込んだ内田はパスとシュートの両方を選択できたハズだ。
――そういう声はテレビでもありましたネ
賀川:ビデオを見ると、内田はドリブルして持ち込んだとき、インサイドで蹴る形にしていた。だからニアへずばっとシュートは無理だったかも知れない。ボールの受け方と、そのあとの修正という問題もシューターには出てくる。
この夜は満月がバックスタンドの上方にあった。望遠レンズを使わずに写したら、こんな風に…
――同点ゴールにゆきましょう
賀川:この内田のチャンスの少しあとに、俊輔が右サイド寄りでファウルで倒され、そのFKを短くつないだあと、彼はスタスタとボールから離れた。ボールが動いて、闘莉王からパスをもらったとき、俊輔は左サイドに寄ったところ、ペナルティエリアより少し離れたところにいた。彼は後方からのパスをノーマークでもらい、反転して前を向くとすぐに右のゴールポスト外のオープンスペースへクロスパスを送った。相手側の届かぬ地点へ大久保がすごい勢いで走り込み、バウンドしたボールをスライディングしながら右足を高く上げて叩いた。ゴール正面へバウンドしてゆくボールに玉田が走り込んで、これも左足のボレーで叩いた。相手のGKイグナチー・ネステロフにはどうしようもなかっただろう。
――大久保、玉田のランが生きた
賀川:スルーパスが得点を生まなかったから、今度は早いクロスにしたのだろう。ノッポぞろいのウズベキスタンのDFへ、高いクロスを送っても取られやすいから、早いボールで、しかもファーポスト側を使った。それも、後方からボールを受けて、振り向きざまのクロスパスだからネ。その気配に応じた2人のFWも良かったが、厳しいマークを巧みな移動でかわし(消え)後方からボールを受けたときにこのクロスを出す意志を示しつつ、相手の意表を突くタイミングで送り込むのだから、やはり中村俊輔。天下のパスの名人だネ。
――そのあと長谷部の右サイド突破からのシュート(GKネステロフの体に当たる)、闘莉王のヘディング(ゴール右外へはずれる)といったチャンスも続いたが、追加点は取れず、1-1で後半へ……
賀川:後半はじめから日本の攻勢があって、玉田が2本、大久保が1本、それぞれシュートしたが得点できず、62分に大久保に代えて岡崎慎司、76分に香川に代えて稲本潤一、81分には玉田に代えて興梠慎三が起用された。
――玉田、大久保の2人はここしばらくずっと出場していた
賀川:大久保は例の退場事件での出場停止のために9月6日(アウェーのバーレーン戦)は出られなかったが、まず彼と玉田の2人がここしばらくの攻撃の主軸となっていた。
大久保はシュートと切れ味という点で、玉田はドリブル突破に魅力がある。第2列からパスを出しウラへ飛び出すのは大久保にとっての働き場所だが、相手が少しずつ上の力を持つDFとなると、彼自身の強さが必要だろう(もちろん本大会でも)。
玉田は何といっても左足のシュートの型、ニアとファーへ蹴り分ける技を持つことだ。もちろん、もっと若いうちに習得すべきものだが、今からでも遅くはない。この選手くらいスピードもあり、力もあれば、心がけ次第でステップアップするハズだ。
――岡崎、興梠をもう少し早く起用すべきという意見も? 2人は先のキリンチャレンジカップのときほど目立たなかった
賀川:あるだろうが、監督さんは選手たちとの信頼関係もあるだろうしネ。ボクはむしろ、その慎重さに感心した。
――終盤は相手側に足に“けいれん”を起こす選手が続出。一方、日本は闘莉王を前線に上げてロングボール、彼のヘディングボールの落下点を狙うというパワープレーに出た
賀川:体の大きいウズベキスタン相手に力勝負に出るのだから、日本もある意味では大したものだといえる。ただし、どんなテを使っても、低い早いクロスにせよ、最後にシュートチャンスをつくり、それを決める。あるいはそのシュートのリバウンドを押し込むことでゴールが生まれる。どんなやり方でもゴールを生まなければ勝てないのだから……。
――シュートは合計14本(日本)と5本(ウズベキスタン)。得点は1点ずつでした
賀川:中村俊輔は2本のFKがあって、この日は得点できなかった。日本の武器といっても、必ず、いつでも入るわけではない。
いい攻撃をつくり、シュートチャンスを生み出しているのだから、それがなぜゴールにならないかを皆でもっと考えるべきだろうネ。
シュートに入る姿勢かもしれない、シュートそのものかもしれない。ボールを蹴るフォームの問題なのか、インパクトの問題なのか。シュートへ入ってゆくコースの問題なのか、体の力の問題なのか――。
――ともかく1勝1分け、2戦して負けなしです
賀川:チームづくりは進んでいるように見える。ただし、長友佑都が欠けると、左サイドで疾走しながらクロスを送ってくる選手が一人もいないのも困るだろう(香川が1本、左足でクロスを出しはしたが…)。
10月16日、東京駅でいくつかのスポーツ紙に「岡田監督解任か」の大きな見出しがあったのには驚いた。
――ゴールを奪って勝てば、そのヒーローが大見出しになるのにネ
賀川:それだけに、サッカーの1ゴール、1得点、1本のシュートが大切なのだ。昔のことをいうと皆笑うだろうが、ちょうどサッカーマガジンの連載に釜本邦茂のことを書いている。今よりも競技人口がうんと少ないときに、世界に誇るストライカーの出たことも忘れないでほしいネ――。
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