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立派な引き分け

2008/02/20(水)

2月17日 東アジア選手権

~対北朝鮮戦の同点ゴールで史上に残る安田のクロス
       第2戦、3戦はプレーヤー個々の気組みに期待~

 中華人民共和国・重慶での東アジア選手権が始まり、日本は第1戦で北朝鮮と1-1で引き分けた。チームプレーにも個々のプレーにも不満はあるが、後半24分の同点ゴールにより、私には長く記憶に残る試合になるだろう。
 それはガンバ大阪の安田理大が左サイドをドリブルで突破してペナルティエリアすぐ外、ゴールライン際から高いクロスを送り、GKリ ミョングがはじいたボールを前田遼一(後半19分に播戸竜二に代わって入った)がヘディングして決めたもの。
 クロスをヘディングで叩くという、ごくシンプルな得点コースだが、ここしばらくの日本代表の試合では、安田のプレーは大きな意味を持っている。

(1)まず第1に、相手が1人だけなのを見て縦に抜いたこと

(2)走った勢いを殺さず、クロスを蹴ったこと

(3)ボールを高く浮かせて相手GKの上を抜いてファーポスト側を狙ったこと

(4)そのコースを予期して前田遼一がファーポスト側に移動したこと

(5)実際にはボールはGKの上を通り抜けないで、リ ミョングが懸命に伸ばした左手に当たって前に落ち、それに反応した前田がヘディングでゴールへ送り込んだのだったが、私にとっては、安田がペナルティエリ ア近くの深いところ(ゴールライン際)に高さのあるクロスを蹴ったこと――つまり(2)(3)の場面が重要だった

(6)この位置からのクロスは、次のような3本が考えられる
  A.ニアサイド(ゴールに近い側)へ送ってそこを狙う
  B.高いボールを送ってファーサイドの仲間に合わせる
  C.斜め後方へ送って仲間がシュートする

(7)ところが、ここしばらくの日本代表の攻撃でBを見る場面はほとんどなかった

(8)この位置から、高く浮かせて相手GKの頭上を抜いてゴールを生んだクロスは、私の記憶では中村俊輔のプレーがあった程度

(9)俊輔の場合はセットプレー、いわゆるリスタートからのものだった

(10)安田がそれを自力突破でやってのけたところが見所でもあった

(11)2010年ワールドカップ・アジア第3次予選のタイとの試合(2月6日・埼玉)での日本の2点目は、山瀬功治が左サイドのゴールラインぎりぎりか ら中へドリブルしてペナルティエリア内に入ったが、クロスを出せず、中村憲剛へのパスを取られ、それを奪い返そうとしたリバウンドを大久保が決めた

(12)今度は同じようにドリブル突破に始まり、意図に近いラストパス(クロス)を蹴ったことで、相手GKのミスを誘発させ前田のヘディングゴールを生んだ

(13)もちろん、安田理大の演じたこのサイド突破とそのあとの高めのクロスというのはサイドのプレーヤーのポジションプレーの1つで、出来るのが当たり前。だが、ここしばらくお目にかかれず不満のふくらんでいた私には、20歳の彼のプレーはとてもうれしいものだった

 東アジア選手権は日本代表にとって、とてもいい経験になる大会だと私は思っている。それは相手国が日本サッカーをよく研究していることと、それぞれの代表の背後の社会が対日意識の強いところで、選手たちの勝利への意欲もとても強いこと。
 彼らは、中盤で激しいプレッシングをかければ、日本の上手そうに見えるボールプレーにミスが出ることや、またゴール前を厚く守り、球際で粘り強くからめ ば日本はパスを回してもゴールを取る力に乏しいこと――などをよく知っている。指導陣も選手たちも、ある意味で日本に対して自信を持っているといえる。

 といって、日本にとって決して難しい相手ではない。こちらが負けない気組み、とくに1対1の奪い合いのときの気構えさえしっかりしておれば、体格が大き い、体力があるといっても、アフリカ系のバネやヨーロッパ人の体躯からみれば、差は、もしあっても大きなものではない。そこに、日本の練った組織力が生き るハズである。
 ただし、その組織力というのはあくまで点を取るため、失点を防ぐためのもの。いまは1対1で仕掛けるとき、いまは個人力で粘るとき、という場面でその気になることが第1だ。

 日本が北朝鮮に奪われたゴールは、鄭大世(チョン テセ=川崎フロンターレ)がボールを受けたときに体を寄せた水本裕貴が鄭の右手のハンドオフでバランスを崩してしまったのが第1、中央へドリブルしてきた 鄭に対して内田篤人の詰め方がマズかったのが第2のポイントだった。
 内田篤人の起用は、日本の将来にも本人の将来にもいい選択だが、まだ鄭への応対ぶりを見ると、上体の揺れが大きいのが目立った。
 ボールを持ったときの形のいいプレーヤーだが、相手の仕掛けへの対応の姿勢はもう一息。ひょっとするとまだ、腹筋などが不十分なのかもしれない。

 第1戦は高原直泰、大久保嘉人らがいないうえに中村憲剛も調子を崩したそうだが、別の見方をすれば、レギュラーでなかった選手たちにはいいチャンスといえる。
 高原もいない、前田も負傷したとなると、トップでのボールの収まりどころで矢野貴章が腕を発揮するのか――中央だけでなくサイドでの基点づくりの工夫がいるだろうし、あと2試合で選手たちは色々な経験を積むことができると思う。
 第1戦の引き分けは、決して悪いことではない。第2戦、第3戦を楽しみにしたい。

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