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選手は頑張った。だがクラブ、若年層からの技術アップがまだまだ必要

2007/07/27(金)

対サウジアラビア:

アジアカップ準決勝
日本 2-3(1-1、1-2) サウジアラビア

 5ゴールが生まれる点の取り合いで、とても面白い試合でした。
 今年のサウジはFWの2人のスピードが際立っていたから、オーストラリアの“大きさ”よりも難しい相手だろう。したがって、1次リーグと準々決勝の4試合に確実に1点ずつ失っている当方だから、2点は覚悟していましたが、3点とは……というところです。
 中村俊輔のパスが冴え、高原直泰の調子がもっと良ければ日本も3点目までゆけたかもしれませんが、彼らは疲れていたようですネ。
 ペナルティエリア内で、相手を背にして落ち着いてプレーできる高原ですが、相手側の体の動き――たとえば、ボールへ足を出す早さ――が良く、対豪州戦のようにはゆきません。
 もっとも、そのぶんをDFの中澤佑二が左CKのときに相手GKの前(ニアサイド)へ飛び込む見事なヘディングで1点目。阿部勇樹がオーバーヘッドのような大ワザで、高原のファーポスト側からのヘディングの折り返しを決めました。
 阿部はもともと右足キックの上手な選手ですから、こうした芸当もできるのでしょう。このセットプレーが2本とも遠藤保仁であったことも、ここしばらくの彼の充実ぶりを表していました。

 阿部や中澤にとっては、3失点は口惜しいでしょう。
 3点目、アルハウサウィがドリブルでエリア内に侵入してきたとき、彼のスピードとフェイクにスペースを与えてしまい、素早いトウ(つま先)気味のシュートを決められてしまいました。
 2点目もそのアルハウサウィでしたが、このときはヘディング。3番オサマ・ハウサウイの右から見事なクロスに合わせました。
 日本側から見れば、左サイドのコーナーで3人が相手2人に対応しながら、アルジャサムが短いパスを3番のハウサウイに渡したときにも、間合いを詰めてい なかったのです。後半始まって2分、本来ならハーフタイムで元気を取り戻し、充実した気分でピッチに立つところを、どういうわけか相手の第一波攻撃ともい える左サイド(日本の右サイド)からの攻め込みへの対応がまずく、あっさり相手に左CKを与えました。この左CKをサウジ側は高く上げて落下させ、それに 飛び出した川口能活が強く叩きだせず、私はテレビの前でイヤな予感(皆さんのなかには昨年の対オーストラリアを思い出された方も)がしたものです。
 そのボールが相手側からいえば右へ流れ、スローインとなって7番と3番によるキープそしてクロスへとなったのです。
「試合のはじめの×分間は大切」と、解説者の多くが呪文のように唱えています。選手たちもそのことは百も承知でしょうが、連戦の疲れなのでしょうか――。

 こんなところでやられるのか――というのは、1点目もそうでした。
 日本のGラインから25メートル、相手からいえば左寄りのFK。中央で9番のCFがヘッドで落とし、20番のヤセル・アルカフタニが決めました。
 この35分の失点は、日本が攻撃に出てパスをカットされたところから始まったのです。
 日本側がFKから遠藤-中村憲剛と渡して、中村が小さなパスを出したのがカットされ、サウジが攻め込んできたとき、日本側のファウルでFKとなりました。
 サウジは接触したときに結構手を使い足で絡み(キッキングも)と色々不正行為をするのですが、近頃のレフェリーは、前からのぶつかりや併走での絡みのと きの不正より、後ろからのものに厳しい笛が多いようです。多数守備の日本は相手の背後から奪いにゆくこともあり、そのときは用心しないと笛を吹かれます。 このときもそう。
 そんなファウルが命取りのFKとなりました。
 上背はなくても、ジャンプ力があり頑健な9番のアルハウサウィへの警戒が充分だったかどうか――。
 サウジをはじめ中東の選手のなかにはアフリカ系もいて、彼らの早さやジャンプ力は東アジアの我々と違うことは昔から知られています。有名なペレ(ブラジ ル)のジャンプは、ゴムマリのように弾むと形容されたものです。そうした能力を持つ選手たちとの対戦は、オリンピックでもワールドカップでも、そしてこの アジアの試合でもつづくことになります。

 日本は前述のように、この先行された2分後に中澤、後半2分に2点目を奪われるとその6分後に阿部と、2度も同点に追いつきました。立派なものです。
 しかしこの日の前半のデータで日本のボールポゼッションが65%もあったのにシュートが3本。相手が6本だったように、後半に入ってもシュート数は増えませんでした。
 中村俊輔は「8人で守り、2人で攻める相手に対して、いま少し工夫が足りなかった」という意味のことを言っているようですが、攻めの工夫のなかにロングシュートもあったでしょう。羽生が投入されて彼のシュートがバーを叩いてから、日本側のシュートも増えました。

 FKやCKは日本の武器というのは確かです。
 プレースキック(止まっているボールを蹴る)の名手が増えたのはJリーグ発足による日本サッカーの進歩の表れといってよいでしょう。中村俊輔は欧州チャンピオンズリーグの得点(対マンチェスター・ユナイテッド)でその評価をさらに高いものにしました。
 すでに何度も述べましたが、日本にFKの名手は増えても、試合中のここというときに彼のようにボールを高く上げて狙った地点へ落下させる選手はまだ少ないのです。
 このことは、ファーポスト側の仲間の頭を狙うとき、長身のゴールキーパーあるいは中央部の長身DFを越すボールを送れるかどうかにかかっています。この 大会でも俊輔が送ったハイクロスから対UAEの1点目(高原のヘディング)、対オーストラリアの同点ゴール(巻の折り返しを高原がシュート)という重要な ゴールが生まれています。
 実はこのキックは両サイドの選手にも目をつけてほしいワザ。せっかく走りこんでゴールライン近くからクロスを上げても、低いために相手DFに跳ね返されるのはもったいないことです。

 私はかつて、ジーコほどのキックの名手が代表監督をしているのに、なぜ彼の持つさまざまなキックの技法を選手が学ばないのか不思議に思ったことがありま す。俊輔のキックは彼独特のものでしょうけれど、ボールを上げて落とすという原理は同じハズ。彼そっくりでなく、彼のキックからヒントを得て、代表の若手 が上げて落とすクロスも身につけてほしいと思うのです。

 オシム監督によって、まず走ること、動くことの重要性が身につき、今大会でも日本選手は驚くべき運動量をこなしています。
 世界中のサッカーが運動量が多くなっているとき、体格が劣る日本代表にとってこれは当然で、ますますランプレーの質量を高めなくてはならないでしょう。自分たちの動きをより効果的にするには当然、工夫が必要です。
「いかに早く走るかも大事だが、いつ走るかはもっと大切だ」と言ったのはヨハン・クライフ。彼の疾風のような早さは、そのタイミングを掴むうまさで効果を上げました。動きの質とともにボールプレーの精度が高くなくてはなりません。

 この試合の3失点は、パスを取られキープしたボールを奪われた、いわゆる“悪い取られ方”をし、そのためにファウルをしなければならないという場面からのものでした。
 サッカーの試合では攻守が一気に変転します。ダイレクトシュートしておけばというときに、ボールを止めて奪われ、そこから一気の反撃を食って失点につながることもあります。
 クロスが相手DFに跳ね返され、それが相手の攻撃を生み出すことは試合中に何度か見るシーン。ボール技術が高まれば、そういうミスによって(急いで帰陣するという)体力消耗を避けられるハズです。

 東南アジアという過酷な条件ゆえに、こういった失敗のためにどれだけ“しんどさ”を味わったかは、テレビでサポーターも充分に感じたところでしょう。
 それを少なくするためには、代表チームだけでなく、代表へ選手を送るJの各チーム、Jのトップへ選手を送り込む若年層、あるいは学校のプレーヤー、コー チも、体力を試合で無駄に消耗しないためにも、技術――ドリブルやトラッピング、パス、シュートなど――を高めることをいま一度考えていただきたいと思い ます。

 今大会での日本代表のレギュラー陣の仕事ぶりは、不満はあっても尊敬に値するものでした。中村憲剛や鈴木啓太の両ボランチの攻守の働き、駒野友一のタフ さ、故障を抱えた加地亮の頑張り、そして代表に復帰してから文字通り中核となった中澤がまたステップアップしたこと、上背の必要なポジションで安定した守 りを続けた阿部、そしてまた、つねに体を張った巻の献身的なプレー…どれをとっても立派なものでした。
 こうしたレギュラークラスに控え選手が早く追いつくことを願っていますが、日本サッカーの大きな組織からゆけば、まだまだ代表の実力を底上げできる人材が上がってきて当然です。

 長身のCDFを早く作ってほしい――とは、いまから20年以上も前に私が、当時のJFA強化部のメンバーに頼んでいたことですが、今回も結局は中澤佑二 ひとりでした。このポジションは優れた長身選手というのが世界の常識で、それが日本のJリーグでは不足していることが、まずおかしい話なのです。

 ともかく、3位決定戦ができるのは選手にもコーチングスタッフにもプラス材料でしょう。私も、大型の韓国の若手を相手にする試合を楽しみにしています。

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