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テレビに映らなかった遠藤のキック

2007/07/19(木)

 アジアカップ2007の1次リーグは、テレビ放送のおかげで各国代表それぞれの特色の出た試合を見ることができ、とても楽しい日々が続いています。もちろん、それも日本代表の1次リーグB組での首位という成績あってのことですが……。

 日本は初戦のカタールに1-1と引き分け、第2戦のUAEに3-1、第3戦のベトナムには4-1で勝ちました。
 つまり3戦2勝1分け、得点8、失点3。1試合に1点の割合でゴールを奪われていて、(1)カタールには88分にFKから(2)UAEには66分にドリブル突破からのパスで崩され(3)ベトナムには7分という早い時間に左CKからオウンゴールの失点でした。

 守る側の理屈からいえば、それぞれの失点にはそれぞれ理由があって、それをことの起こりから反省してゆくことになります。少し詳しく言えば、カタールに取られたゴールは、

(1)中盤でのヘディングの応酬に日本側がしっかり競らずに(2)ボールが相手の有利な形に渡ったこと、そして(3)相手側のスルーパスは、それほど難しいボールでなかったのに阿部勇樹がファウルで相手FWセバスティアンを倒したことで危険地帯でのFKとなったこと。
 ここまでは前段階で、ここから、いよいよFKそのものになりますが、(4)ウルグアイから帰化したというセバスティアンのキックはこの試合で1本あったFKを見れば、私のような第3者から見ても、ライナーの威力が脅威でした。
 とすると、(5)壁の隙間を通るのを警戒するのが当然(6)その隙間を日本の壁に入った相手チームの選手が体をぶつけて広げ、そこを狙ってセバスティアンが蹴ったのです。
(7)体をぶつけて壁を広げるのは、今のルールでは反則のようですが、このときレフェリーの笛はなく、また、シュートは誰かに当たって少し方向も変わって川口には難しいシュートになったということです。

 相手チームについての事前情報で、当然、カタールのエース・ストライカーのプレー、特にシュートそのものについて、監督・コーチは知っていたハズだし、そのことは事前の練習でも選手たちに浸透しているハズですが、この場合はどうだったのでしょう。
 テレビで見ていて、セバスティアンが右手でもう一人の仲間に自分が蹴るという合図をして、シュートの構え(短い助走で一本目もすごいシュートでバーを越した)に入ったとき、思わず「ヤバイ」と叫んだものです。

 ボールをキープして巧みにパスを回し、きれいなパス攻撃から高原がビューティフル・ボレーを決めるのも1点。一人の強いシュートの持ち主の2本のFKのうち1本がゴールに突き刺さるのも1点に違いはありません。
 どんなにしっかり守っても、1失点はありえること。特に日本代表のように、身体的な条件で相手に劣る場合には、理不尽のように見える失点も歴史的に見て何度も経験しています。だからこそ、チャンスを数多く作り出し、2点目、3点目を奪う力をつけることが大切なのです。

 私の若い友人の武智幸徳記者がサッカーマガジン誌上の「ピッチのそら耳」というページで、このカタール戦から始まった一連の日本代表(U-20を含め て)の試合終盤での点の取られ方に「ハラハラドキドキする」という心境をうまく書いていますが、おそらく日本中の多くのファンも同感でしょう。
 終盤に追い上げられる日本代表の今の体質については私なりの意見はありますが、それはひとまず脇において置くとして、第2戦の対UAEの最初のゴールは、少なくともカタール戦の不満・不平を希望に変えるキッカケとなったハズです。

 すでに1敗しているUAEは、この試合はスタートから攻勢に出てきました。カタールのようにひいて守ってのカウンターというのに比べると、日本側にはや りやすい形となりましたが、それでも相手FWの早さや巧みなドリブルやシュートには時々「うまい」と声が出ることもあり、見応えのある攻防が続きました。
 20分を過ぎて左の駒野のシュート(DFの体に当たる)、右からの早いクロスと、日本の攻撃が1波、2波と続き、左CKとなりました。

 右から左、左から右へと揺さぶった後で、当然、日本も相手も疲れていましたが、この左CKを遠藤はショートコーナーで近くの中村俊輔に渡し、俊輔がペナ ルティエリアの根もと(ゴールラインとエリアの縦ラインの交わるところ)ギリギリからクロスを上げ、高原が飛び込むようにヘディングを決めました。
 面白いことに、テレビの画面はリプレーを見ても遠藤がコーナーでキックする姿はなく、いきなりパスが俊輔に渡るところから始まっています。
 にぎやかなことで知られるA局の画面ではCKになったあと、しばらく給水の必要性の話が出ていたのですが、解説者たちも、テレビのカメラを操作する専門家も気づかぬ早いうちに、遠藤-俊輔のパスが出たことになります。

 俊輔は試合後のテレビインタビューにさりげなく、リスタートを早くやれるときはできるだけ早くやろうと考えていたこと、そして監督の指示(すぐメディア は聞きたがります)があっても、選手たちはそれをどういうふうに実行するかを話し合っているという意味のことを、チラリと語っていました。
 ゴールにボールを叩き込んだのは高原ですが、彼は第1波攻撃、第2波攻撃では左サイドにいて、左CKになったときにファーサイドのほうへ移動し、外側から俊輔のキックに合わせて相手DFの前(ニアサイド)へ飛び込むようにヘディングしたのです。

 高原のフランクフルトでのゴールの積み重ねのシーンは残念ながら見ていませんが、6月のキリンカップでも、自分の“戦場”への彼のアプローチのうまさに感心しました。
 多くは左に開いてから中へ、あるいは右へ動いて、ボールが来るスペースをあけておき、相手DFの視野の外からそこへ入るのですが、そのタイミングはまさに天下一品。この得点で彼のその経路を見ようとしたのですが、どのリプレーにも映っていなかったのです。

 ということは、再度申し上げると、それほど、遠藤-俊輔-高原の早いプレーはカメラにも捉えられなかったということになると思います。
 そして、そのタイミングで正確にボールの底を蹴ってGKに取られないボールを浮かしてゴール前に落下させた俊輔の左足のキックの技術も、難しい姿勢ながら正確なヘディングでボールを叩いた高原のうまさも、それが当然のように実行されるのに感服しました。

 高原はゴールを決めた後、まず俊輔に駆け寄りました。俊輔は高原、次いで遠藤に「良くやったネ」というふうに手を挙げましたが、その左手には給水のペットボトルを持っていました。彼らは給水の時間を惜しんで早いリスタートをしたのかもしれないと、思いました。

 こういう細かいところはテレビでないと見られないことがありますが、現地でスタンドの記者席から見下ろすと全体の動きはとてもよく分かります。そして一 人一人の選手の姿勢で何かあったということも頭に残り、それをテレビ画面で確かめることもあります。今回はテレビだけのもどかしさを感じつつの、新しいテ レビ観戦の楽しみの一つでした。

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