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2007年7月

選手は頑張った。だがクラブ、若年層からの技術アップがまだまだ必要

2007/07/27(金)

対サウジアラビア:

アジアカップ準決勝
日本 2-3(1-1、1-2) サウジアラビア

 5ゴールが生まれる点の取り合いで、とても面白い試合でした。
 今年のサウジはFWの2人のスピードが際立っていたから、オーストラリアの“大きさ”よりも難しい相手だろう。したがって、1次リーグと準々決勝の4試合に確実に1点ずつ失っている当方だから、2点は覚悟していましたが、3点とは……というところです。
 中村俊輔のパスが冴え、高原直泰の調子がもっと良ければ日本も3点目までゆけたかもしれませんが、彼らは疲れていたようですネ。
 ペナルティエリア内で、相手を背にして落ち着いてプレーできる高原ですが、相手側の体の動き――たとえば、ボールへ足を出す早さ――が良く、対豪州戦のようにはゆきません。
 もっとも、そのぶんをDFの中澤佑二が左CKのときに相手GKの前(ニアサイド)へ飛び込む見事なヘディングで1点目。阿部勇樹がオーバーヘッドのような大ワザで、高原のファーポスト側からのヘディングの折り返しを決めました。
 阿部はもともと右足キックの上手な選手ですから、こうした芸当もできるのでしょう。このセットプレーが2本とも遠藤保仁であったことも、ここしばらくの彼の充実ぶりを表していました。

 阿部や中澤にとっては、3失点は口惜しいでしょう。
 3点目、アルハウサウィがドリブルでエリア内に侵入してきたとき、彼のスピードとフェイクにスペースを与えてしまい、素早いトウ(つま先)気味のシュートを決められてしまいました。
 2点目もそのアルハウサウィでしたが、このときはヘディング。3番オサマ・ハウサウイの右から見事なクロスに合わせました。
 日本側から見れば、左サイドのコーナーで3人が相手2人に対応しながら、アルジャサムが短いパスを3番のハウサウイに渡したときにも、間合いを詰めてい なかったのです。後半始まって2分、本来ならハーフタイムで元気を取り戻し、充実した気分でピッチに立つところを、どういうわけか相手の第一波攻撃ともい える左サイド(日本の右サイド)からの攻め込みへの対応がまずく、あっさり相手に左CKを与えました。この左CKをサウジ側は高く上げて落下させ、それに 飛び出した川口能活が強く叩きだせず、私はテレビの前でイヤな予感(皆さんのなかには昨年の対オーストラリアを思い出された方も)がしたものです。
 そのボールが相手側からいえば右へ流れ、スローインとなって7番と3番によるキープそしてクロスへとなったのです。
「試合のはじめの×分間は大切」と、解説者の多くが呪文のように唱えています。選手たちもそのことは百も承知でしょうが、連戦の疲れなのでしょうか――。

 こんなところでやられるのか――というのは、1点目もそうでした。
 日本のGラインから25メートル、相手からいえば左寄りのFK。中央で9番のCFがヘッドで落とし、20番のヤセル・アルカフタニが決めました。
 この35分の失点は、日本が攻撃に出てパスをカットされたところから始まったのです。
 日本側がFKから遠藤-中村憲剛と渡して、中村が小さなパスを出したのがカットされ、サウジが攻め込んできたとき、日本側のファウルでFKとなりました。
 サウジは接触したときに結構手を使い足で絡み(キッキングも)と色々不正行為をするのですが、近頃のレフェリーは、前からのぶつかりや併走での絡みのと きの不正より、後ろからのものに厳しい笛が多いようです。多数守備の日本は相手の背後から奪いにゆくこともあり、そのときは用心しないと笛を吹かれます。 このときもそう。
 そんなファウルが命取りのFKとなりました。
 上背はなくても、ジャンプ力があり頑健な9番のアルハウサウィへの警戒が充分だったかどうか――。
 サウジをはじめ中東の選手のなかにはアフリカ系もいて、彼らの早さやジャンプ力は東アジアの我々と違うことは昔から知られています。有名なペレ(ブラジ ル)のジャンプは、ゴムマリのように弾むと形容されたものです。そうした能力を持つ選手たちとの対戦は、オリンピックでもワールドカップでも、そしてこの アジアの試合でもつづくことになります。

 日本は前述のように、この先行された2分後に中澤、後半2分に2点目を奪われるとその6分後に阿部と、2度も同点に追いつきました。立派なものです。
 しかしこの日の前半のデータで日本のボールポゼッションが65%もあったのにシュートが3本。相手が6本だったように、後半に入ってもシュート数は増えませんでした。
 中村俊輔は「8人で守り、2人で攻める相手に対して、いま少し工夫が足りなかった」という意味のことを言っているようですが、攻めの工夫のなかにロングシュートもあったでしょう。羽生が投入されて彼のシュートがバーを叩いてから、日本側のシュートも増えました。

 FKやCKは日本の武器というのは確かです。
 プレースキック(止まっているボールを蹴る)の名手が増えたのはJリーグ発足による日本サッカーの進歩の表れといってよいでしょう。中村俊輔は欧州チャンピオンズリーグの得点(対マンチェスター・ユナイテッド)でその評価をさらに高いものにしました。
 すでに何度も述べましたが、日本にFKの名手は増えても、試合中のここというときに彼のようにボールを高く上げて狙った地点へ落下させる選手はまだ少ないのです。
 このことは、ファーポスト側の仲間の頭を狙うとき、長身のゴールキーパーあるいは中央部の長身DFを越すボールを送れるかどうかにかかっています。この 大会でも俊輔が送ったハイクロスから対UAEの1点目(高原のヘディング)、対オーストラリアの同点ゴール(巻の折り返しを高原がシュート)という重要な ゴールが生まれています。
 実はこのキックは両サイドの選手にも目をつけてほしいワザ。せっかく走りこんでゴールライン近くからクロスを上げても、低いために相手DFに跳ね返されるのはもったいないことです。

 私はかつて、ジーコほどのキックの名手が代表監督をしているのに、なぜ彼の持つさまざまなキックの技法を選手が学ばないのか不思議に思ったことがありま す。俊輔のキックは彼独特のものでしょうけれど、ボールを上げて落とすという原理は同じハズ。彼そっくりでなく、彼のキックからヒントを得て、代表の若手 が上げて落とすクロスも身につけてほしいと思うのです。

 オシム監督によって、まず走ること、動くことの重要性が身につき、今大会でも日本選手は驚くべき運動量をこなしています。
 世界中のサッカーが運動量が多くなっているとき、体格が劣る日本代表にとってこれは当然で、ますますランプレーの質量を高めなくてはならないでしょう。自分たちの動きをより効果的にするには当然、工夫が必要です。
「いかに早く走るかも大事だが、いつ走るかはもっと大切だ」と言ったのはヨハン・クライフ。彼の疾風のような早さは、そのタイミングを掴むうまさで効果を上げました。動きの質とともにボールプレーの精度が高くなくてはなりません。

 この試合の3失点は、パスを取られキープしたボールを奪われた、いわゆる“悪い取られ方”をし、そのためにファウルをしなければならないという場面からのものでした。
 サッカーの試合では攻守が一気に変転します。ダイレクトシュートしておけばというときに、ボールを止めて奪われ、そこから一気の反撃を食って失点につながることもあります。
 クロスが相手DFに跳ね返され、それが相手の攻撃を生み出すことは試合中に何度か見るシーン。ボール技術が高まれば、そういうミスによって(急いで帰陣するという)体力消耗を避けられるハズです。

 東南アジアという過酷な条件ゆえに、こういった失敗のためにどれだけ“しんどさ”を味わったかは、テレビでサポーターも充分に感じたところでしょう。
 それを少なくするためには、代表チームだけでなく、代表へ選手を送るJの各チーム、Jのトップへ選手を送り込む若年層、あるいは学校のプレーヤー、コー チも、体力を試合で無駄に消耗しないためにも、技術――ドリブルやトラッピング、パス、シュートなど――を高めることをいま一度考えていただきたいと思い ます。

 今大会での日本代表のレギュラー陣の仕事ぶりは、不満はあっても尊敬に値するものでした。中村憲剛や鈴木啓太の両ボランチの攻守の働き、駒野友一のタフ さ、故障を抱えた加地亮の頑張り、そして代表に復帰してから文字通り中核となった中澤がまたステップアップしたこと、上背の必要なポジションで安定した守 りを続けた阿部、そしてまた、つねに体を張った巻の献身的なプレー…どれをとっても立派なものでした。
 こうしたレギュラークラスに控え選手が早く追いつくことを願っていますが、日本サッカーの大きな組織からゆけば、まだまだ代表の実力を底上げできる人材が上がってきて当然です。

 長身のCDFを早く作ってほしい――とは、いまから20年以上も前に私が、当時のJFA強化部のメンバーに頼んでいたことですが、今回も結局は中澤佑二 ひとりでした。このポジションは優れた長身選手というのが世界の常識で、それが日本のJリーグでは不足していることが、まずおかしい話なのです。

 ともかく、3位決定戦ができるのは選手にもコーチングスタッフにもプラス材料でしょう。私も、大型の韓国の若手を相手にする試合を楽しみにしています。

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対オーストラリア:日本がハイクロスから得点、相手はライナーのCKで得点。サッカーは一筋縄ではゆかない(2)

2007/07/24(火)

 ビドゥカという長身頑健なストライカーへの警戒論が、試合前のメディアで取り上げられました。
 昨年の経験から、体格の良いオーストラリアを相手にしたセットプレーでの空中戦の劣勢を考えてのことです。
 実際に点を取られたのも右CKでしたが、皮肉なことに、ハイボールの空中戦でなく、キューエルの左足キックによる低くて早いボールが左コーナーから日本のゴール前を通り、これをアロイージが足に当てて決めたのでした。

 後半24分のこのゴールシーンは(1)ブレシアーノの飛び出しとドリブルから相手の右CKのチャンスとなり(2)キッカーは左利きのキューエル。ゴール前には中央ややニア寄りにブレシアーノ、ファーポストにはアロイージがいました。
(3)キューエルの早い低ボールに対して、ニアポストへミリガンが飛び込んだものの触れず、ボールがそのままゴール前をバウンド。通り過ぎようとしたときにアロイージが来て、マークの巻よりも前に出て右足でタッチしました。
 巻と競り合いながら、ともかくボールに当てるところは、やはり体の強さが出ていました。

 セットプレーで空中戦に負けないこと。これを心がけていた日本側にとって、この低く早いキューエルのキックは致命傷となりました。
 サッカーは面白いもの。考えていたことと全然違った形でのゴールがあり得る――。
 私がそう思ったのは1941年の神宮大会・準決勝の対青山師範でした。体格が立派でキック力のすごいこの相手に、私たち神戸一中は3-0で勝ったのですが、その1点目は私が決めました。
 それがなんと、私たちのショートパスの崩しではなくDFからのロングボール。チビのCF(センターフォワード)の私は、FB(フルバック)の山中弘が高 いボールを蹴ってきたのを見て、「なんということを」と思いながらもノッポの相手の前へ走っていったら、何のはずみかDFに当たったボールが私の前でバウ ンド。それをジャンプキックで押えて蹴ったら、ゴールへ入ってしまいました。
 16歳と10ヶ月の頃のこの経験で、サッカーでは自分の一番得意なやり方でなくても、相手の予想と違ったときは点を取れる可能性が大きいと知りました。

 メルボルンオリンピックで優勝したソ連代表はショートパスの巧みさで知られていましたが、決勝ゴールは一本のロングパスが通っての得点。今度もサッカーの神様は、その皮肉屋の面をチラリチラリと覗かせました。

 日本は失点のあと、高原直泰の見事なシュートで同点としました。
 ファーポストへのクロスを巻がヘッドで折り返し、相手DFが蹴り損ねたのを拾って、キックフェイントで反転。左足シュートを左ポストいっぱいに叩き込みました。
 高原のドイツでの成長を見ることのできるのが、この大会の楽しみのひとつですが、その高原へのボールの経路を考えると、(1)ペナルティエリア左サイド の外側、タッチ寄りからの中村俊輔のハイクロスが効きました。この俊輔のキックに至るまでには、それこそ、いまの代表らしいパス交換があって、遠藤が俊輔 へタテにボールを流し込むように渡すことで、俊輔のクロスへの体勢が生まれるのですが(2)注目したいのは、これまでCKの多くを空中戦の不利を避けて低 いボールにしていたのを、俊輔が得意の“上げて落とす”高いボールをファーポスト側へ蹴ったことです。

 中村俊輔のキックはキリンカップの頃なども申し上げている(http://www.fcjapan.co.jp/KSL/bunko_japan/kirin/)とおり、ターゲット(目標)の上へ落下させることです。
 UAE戦のゴールでもそれがありました。
 ただしこの試合では互いの力を考えて、それまで出していなかったのを、このときはファーポストの巻を狙って蹴り、それに巻が応え、ヘディングしたボールが運良く高原に渡ったのです。

 相手に高さがあってもターゲットに届かせるキック――高い相手の上を越し、目標に落ちる――は、日本では中村俊輔の右に出る者はいないし、欧州でも独特の存在として注目されています。
 ファーポストでの折り返しのヘディングというと、1968年メキシコオリンピック1次リーグ・第2戦の対ブラジル。杉山からのクロスを釜本がファーポスト際のヘディングで折り返し、それを渡辺が決めて0-1から引き分けにしたのを思い出します。
 この引き分けで1次リーグ突破の目論見が立つ、貴重なものでしたが、今度のこの中村俊輔-巻-高原の折り返しヘディングからのゴールも、歴史に残るひとつでしょう。

 今大会の1次リーグ3試合と対オーストラリアを見れば、いまの日本代表の技術レベルは少しずつ伸びてはいても、まだまだ不足部分の多いことに気づかれるでしょう。
 これまでもお話しているように、クロスパス、ラストパス、シュートの精度です。
 と同時に、サッカーでは1対1の個人力が基礎という考え方。走ることは、日本サッカーの特色から見て組織力を生かすうえで当然ですが、その組織で勝つということと、個人力アップは決して相反するものではありません。
 今後の2試合を見ながら、このことをもう一度考えてみたいと思います。

 準決勝の相手・サウジアラビアは、オーストラリアより強いように見えます。攻撃的なプレーヤーは、今度は高さや体格の大きさでなく、早さと強さです。もちろん高速でのボール処理力もあります。
 ベスト4へ出たおかげで、またタイプの違う強敵と試合できるのは、選手たちにも私たちにも、うれしいことですね。

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対オーストラリア:日本がハイクロスから得点、相手はライナーのCKで得点。サッカーは一筋縄ではゆかない(1)

2007/07/24(火)

アジアカップ準々決勝

    日本 1-1 オーストラリア
     前半1-0
     後半0-0
  延長前半0-0
  延長後半0-0
      PK4-3

 昨年のワールドカップの対オーストラリアは、カイザースラウテルンの私の記者席のすぐ下で駒野のヘディングによるクリアのタッチアウトがあり、そこからのロングスローで悪夢のような敗戦のシーンが始まりました。
 今回のアジアカップは自宅のテレビ前でしたから、スタジアムでの緊張感とは少し違っていましたが、それでも、リードされ、同点にし、相手が10人になり、押し込んで追加点を取れず、あげくPK戦という経過に、試合が終わった後はぐったりしてしまいました。
 しかし何はともあれ、勝って何よりでした。

 ここで負けてしまうと、夏の話題が一つ少なくなるだけでなく、暗くなってしまいます。
 野球が、イチローや松坂を先陣にハンカチ王子というニューフェイスも加わり、プロも大学も、高校もいっせいに盛り返し始めました。マスメディアの古株の 関係者はいっときのサッカー人気にいささか戸惑っていたのが、再び自分たちの好きな野球を、誰はばかることなく取り上げられるようになっています。
 そういう時期に、たとえPK勝ちでもベスト4に勝ち残ってくれたのは、まことにうれしいことです。

 日本代表チームとして、少なくとも、あと2試合公式の試合を戦い、経験を積むことができます。プロとなり選手個々の技術は上がっても、代表チームが国際 試合で勝つには組織プレーが大切なことはいうまでもなく(オシムが語るはるか以前、80年前からの日本サッカーの考えです)、したがって連係プレーを伸ば すための試合経験が必要です。

 さて、対オーストラリアを振り返ってみると、中澤佑二に始まり、中澤佑二に終わりました。
 相手のキックオフで始まったこの試合。最初にオーストラリアがロングボールをビドゥカの頭上に送り、それをヘディングで跳ね返したのがCDFの中澤でし た。90分の1-1、15分ハーフ延長の0-0、そしてその後のPK戦。日本の5人目のキッカー、中澤の右足で蹴られたボールがゴール右上隅へ入って日本 の勝利が決まりました。

 ノックアウトシステムの試合で、PK戦は非常に重要な試合の一部なのです。
 中澤はこの試合で最初にボールに触れた日本選手で、最後にボールを蹴った日本選手でした。これは、昨年も守備の中心で戦い、代表から退いていた彼にとっての素晴らしい勲章になりました。

 もちろん川口能活の守りもそうです。
 前回大会での彼のPK戦での強さは、その奇跡的なプレーとともに特筆ものですが、今回は相手が消耗していたこともあり、テレビ画面から川口の方に余裕があるように見えました。
 一人目のキューエルの左足キックの前に、彼は少し動いたのですが、オンラインで小さなすり足で動いたから予想(自信を持っていたハズですが)とは逆に なっても飛べる体勢にありました。いわば相手のキックの方向へ心の準備をして、なお、体には別の備えもあったといえるでしょう。多くのゴールキーパーが先 に大きく(上体ともに)動いてしまうのを見ているいまのPK戦では、川口の素晴らしさが際立った瞬間でした。

(つづく)

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ベトナム戦を見て

2007/07/21(土)

 ベトナムといえば1967年秋、東京で行なわれた68年メキシコ五輪・アジア予選の最終戦で日本代表が苦戦の末、1-0で勝った試合が記憶に残っています。当時は、南ベトナムの代表でした。
 ベトナムは私が中学生のころはフランス領インドシナで、日本では仏印と呼んでいました。

 今度の開催4ヶ国のうち、タイは当時から独立していました(アンナとシャム王のミュージカル映画のとおり)が、マレーシアは英連邦の一つ、インドネシア はオランダ領インドで、略して私たちは蘭印と呼んでいました。ヨーロッパの影響でサッカーは早くから普及し、またマレーシアではセパ・ラガ、タイではタク ロウ、ビルマではチンロンと呼ばれたインドシナ半島独特のボールゲームがあり、籐で編んだボールを使っての遊びがあり、バレーボール形とバスケットボール 形(吊り下げた輪へ入れる)と、さらにはボールリフティングを落とさずに競う、日本の蹴鞠に似たタイプのものがあります。ベトナムでこの遊戯が行なわれて いたかどうかは、まだ調べがついていませんが、中国の影響が古くからつづいていたところですから当然、足でボールを扱う遊びはあったハズです。

 サッカーは、それぞれ四つの国々でナンバーワンの大衆スポーツです。
 経済発展の目ざましいベトナムにとって、今度の大会で準々決勝に残ることは市民・国民の大きな励みになるハズ。それは他の国々も同じですが、人種的に見 て、体格のうえで西アジアや中国に比べるとハンデがあり、また暑い気候が日本や韓国のような運動量の多いサッカーを続けるには妨げになっています。ただし 子どものころからのタクロウ遊びや体の柔らかさ、もって生まれた俊敏さは、私たち東アジアや欧米の人たちより上だと見られています。

 試合のはじめはベトナムの動きがよく見えました。がんばり屋の駒野が相手のドリブルのスピードに手を焼いていたくらいで、そして左CKからの失点が7分に――。
 ライナーのボールを競りに行った鈴木の体に当たってゴールへ。鈴木がのけぞるような姿勢になったところにボールが当たったのです。もとっとも、このゴールで日本にも火がついたと言えます。

 1点目はやはり左サイドから、今度も中村俊輔のクロス、ただし決めたのは巻でした。
 遠藤からのロングボールを俊輔がエリア内で受け、キックフェイントでDFを揺さぶってかわし、左足のスライスキックでファーポストへ送りました。早いボールでゴールキーパーは取れず、それを外側から内に入ってきた巻がヘッドでなく胸に当ててゴールへはじき込みました。

 実は大会前のサッカーマガジンのアンケートで、私は注目選手の項に前田遼一(ジュビロ磐田)を挙げました。彼はレギュラーでなくても、いま代表に入れておく時期と思ったからです。チームのポジションの項目では、FWに高原と巻を組み合わせています。
 高原というエースを生かすためにも巻きの献身的なプレーが必要で、同時にまたアジア勢を相手に彼の高さは必要と考えたからです。
 第1戦は1トップでしたが、第2戦では巻が起用され、私が考えたとおり働いてくれました。
 対UAEの2点目。加地が中へクロスを送ろうとしたとき、彼は右前から中央へ移り、ボールが入ってくる前に3人の位置を変えました。高原の見事なトラップシュートの前に、遠藤のノータッチフェイクと巻のポジション移動の2つの伏線があったのです。
 ゴールを奪うためには、FWのこうしたスペースを作る動き、そしてそこへいつ入るかが重要なことはすでにお話しましたが、巻は高原とペアを組むことで、こういうプレーを伸ばしてゆくでしょう。

 2点目は遠藤のFKでした。
 この日の遠藤は左CKのときに積極的にファーあるいは中央を狙いました。彼の長蹴力からゆくと、ファーポストへのコントロールキックは難しいハズですが、あえて蹴ったのは自分の力を伸ばそうとしたからかもしれません。
 その長いキックを敢行(成功しませんでしたが)してきた遠藤には、高原へのファウルが生まれたFKの位置は十分に狙える距離だったのでしょう。
 自分から蹴る意志を表した31分のFKは、彼が優れたキッカーであることをインターナショナルの舞台で示した一発でした。

 後半8分のゴールは左サイドで遠藤と駒野のパス交換から駒野がGラインまで侵入して後方へ戻し、遠藤がこれを横に流して中村俊輔が右足インサイドでコントロールされた早いボールを左ポスト際に送り込みました。

 その4分後の4点目は、駒野が倒された反則でのFKを遠藤が左から蹴ってファーポスト側へ。これを巻がヘッドで決めました。ニアサイドに高原、中央に中澤が入って相手の注意をひきつけていました。
 欧州勢やオーストラリアを相手にして体格の面で苦労する日本ですが、対ベトナムは上背では有利。こういう体格面の底上げも大切なことです。

 勝った試合、奪ったゴールシーンの話は、うれしいもの。
 しかし、問題もあります。
 今度の大会は高温多湿の条件。選手にはつらいことですが、相手もまた疲れています。従って、中盤でのプレッシングは初めはともかく、時間の経過とともに 弱くなります。そこで日本チームのボール回し、パス交換が楽になり、攻撃の組み立てにも余裕ができ、技術を発揮できるのです。

 準々決勝からは、体格も体力もこれまでの相手より上になります。
 テレビで見た、サウジアラビアの選手の早さや終盤でも衰えない体力はなかなかのもの。中国選手たちは高さ、オーストラリア勢は長身と体の強さが武器です。

 中澤、阿部、今野、駒野、加地といったDF陣、そして中村憲剛、鈴木、中村俊輔、遠藤のMF、高原、巻のFWといったメンバーでここまで戦ってきましたが、レギュラー陣に比べると、交代する選手たちが十分に働けたかどうか――。
 CDFにしても、中澤とともに守るはずの闘莉王が欠け、身長のハンデが出てくることもあるでしょう。
 私は、前述のアンケートに、「目指すは優勝」と答えています。その理由は、環境面で日本が一番だから当然、としています。果たしてそうなのかどうか――アジア各国と比べてみたいと思っているのです。

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UAE戦の2点目、3点目

2007/07/19(木)

 もう少し、UAE戦について。

 この試合の2点目も、高原のシュートでした。
 右からのクロスを体で止め、右足ボレーで蹴ったビューティフル・ゴールでしたが、この攻撃の発端が高原の左サイドへの飛び出しであったことも書き添えなくてはなりません。

 25分に相手のウラへ走った高原が左サイドでボールを取りましたが、まだ仕掛ける時期ではない――とみて、後方へボールを戻し、そこから右へボールが送られました。加地と遠藤の右サイドでのパス交換、そして、遠藤が右前から中村俊輔に戻し、俊輔は右後方の鈴木に。
 ハーフライン手前で受けた鈴木は、すぐ隣の中央の中澤をとばして阿部に。阿部は今度は、縦にドリブルで持ち上がり、そこから左足で右の加地へ――と大きく振りました。
 加地はここからまた後ろの鈴木に、鈴木から俊輔を経て再び加地にボールが戻され、加地が前方に巻、中央に遠藤と高原がそろっているのを見て、早いクロスを送りました。

 このボールは遠藤が取れそうに見えましたが、彼はそのままやり過ごして前へ、ボールが高原に届いたとき、彼をマークしていたDFは一瞬、間合いを詰める のが遅れました。高原は身をかがめるようにして体でボールを押さえ、そのバウンドを右足でとらえてボレーシュート。ボールはゴールキーパーを抜いてゴール に飛び込みました。

 日本のサッカー界には勉強家が多く、その外国から学ぶ姿勢にはいつも敬服しますが、昨年のドイツワールドカップのころから、一時、パスは何本以内の方が得点の効果がある――とか、奪って何秒以内の攻撃が成功率が高い――といった話が語られ、書かれていました。
 それからゆくと、このときのタッチ数の多さ、パス交換の本数やキープしている時間の長さはいささか邪道に見えますが、このときは、日本のボールキープ、 ボールを動かすことで相手はその対応で体を動かすとともに神経を使って疲れを増すことになります。同時に攻撃側は、自分が狙うスペースへ入る準備をするこ とで効果があるのです。

 このゴールのポイントはまず、遠藤が自分の近くに来たボールをタッチしそうでタッチせずに高原に渡したこと。これはゴール正面にいた高原に対する信頼と、自分のフェイクによってわずかでもスペースや時間的余裕が生まれることを予想してのことだったと思います。
 彼はなんといってもJリーグ首位チームのプレーメーカーで、キックの確かさはもとより、チームの動き全般への目配りと次の攻めを効果的にするアイデアの豊富さは、いま第一人者と言ってよいでしょう。

 その彼の狙いどおり、高原のシュートが決まりましたが、今の高原のよさは、こうしたチャンスを逃さぬうまさ。もちろん、それはボールを止め、リバウンドをボレーで叩く間にいい姿勢でバランスを保っていられる体(足・腰・膝)の強さもあります。
 ドイツで体の強いDFに絡まれながら働いてきた実績は、この大会では第1戦のあの気の毒に見えたワントップという役割で、後方から何度もファウル・タックルを受けながらポスト役を務めたことにも表れています。
 こうした咄嗟(とっさ)のシュートを成功させるためのシュート練習や、それを通しての体づくりについてはまた別の機会にしたいのですが、ゴールを奪うと いうことには、こうした個人の総合力と味方・仲間とのプレーの組み合わせが必要だということを、あらためて強調したいものです。

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テレビに映らなかった遠藤のキック

2007/07/19(木)

 アジアカップ2007の1次リーグは、テレビ放送のおかげで各国代表それぞれの特色の出た試合を見ることができ、とても楽しい日々が続いています。もちろん、それも日本代表の1次リーグB組での首位という成績あってのことですが……。

 日本は初戦のカタールに1-1と引き分け、第2戦のUAEに3-1、第3戦のベトナムには4-1で勝ちました。
 つまり3戦2勝1分け、得点8、失点3。1試合に1点の割合でゴールを奪われていて、(1)カタールには88分にFKから(2)UAEには66分にドリブル突破からのパスで崩され(3)ベトナムには7分という早い時間に左CKからオウンゴールの失点でした。

 守る側の理屈からいえば、それぞれの失点にはそれぞれ理由があって、それをことの起こりから反省してゆくことになります。少し詳しく言えば、カタールに取られたゴールは、

(1)中盤でのヘディングの応酬に日本側がしっかり競らずに(2)ボールが相手の有利な形に渡ったこと、そして(3)相手側のスルーパスは、それほど難しいボールでなかったのに阿部勇樹がファウルで相手FWセバスティアンを倒したことで危険地帯でのFKとなったこと。
 ここまでは前段階で、ここから、いよいよFKそのものになりますが、(4)ウルグアイから帰化したというセバスティアンのキックはこの試合で1本あったFKを見れば、私のような第3者から見ても、ライナーの威力が脅威でした。
 とすると、(5)壁の隙間を通るのを警戒するのが当然(6)その隙間を日本の壁に入った相手チームの選手が体をぶつけて広げ、そこを狙ってセバスティアンが蹴ったのです。
(7)体をぶつけて壁を広げるのは、今のルールでは反則のようですが、このときレフェリーの笛はなく、また、シュートは誰かに当たって少し方向も変わって川口には難しいシュートになったということです。

 相手チームについての事前情報で、当然、カタールのエース・ストライカーのプレー、特にシュートそのものについて、監督・コーチは知っていたハズだし、そのことは事前の練習でも選手たちに浸透しているハズですが、この場合はどうだったのでしょう。
 テレビで見ていて、セバスティアンが右手でもう一人の仲間に自分が蹴るという合図をして、シュートの構え(短い助走で一本目もすごいシュートでバーを越した)に入ったとき、思わず「ヤバイ」と叫んだものです。

 ボールをキープして巧みにパスを回し、きれいなパス攻撃から高原がビューティフル・ボレーを決めるのも1点。一人の強いシュートの持ち主の2本のFKのうち1本がゴールに突き刺さるのも1点に違いはありません。
 どんなにしっかり守っても、1失点はありえること。特に日本代表のように、身体的な条件で相手に劣る場合には、理不尽のように見える失点も歴史的に見て何度も経験しています。だからこそ、チャンスを数多く作り出し、2点目、3点目を奪う力をつけることが大切なのです。

 私の若い友人の武智幸徳記者がサッカーマガジン誌上の「ピッチのそら耳」というページで、このカタール戦から始まった一連の日本代表(U-20を含め て)の試合終盤での点の取られ方に「ハラハラドキドキする」という心境をうまく書いていますが、おそらく日本中の多くのファンも同感でしょう。
 終盤に追い上げられる日本代表の今の体質については私なりの意見はありますが、それはひとまず脇において置くとして、第2戦の対UAEの最初のゴールは、少なくともカタール戦の不満・不平を希望に変えるキッカケとなったハズです。

 すでに1敗しているUAEは、この試合はスタートから攻勢に出てきました。カタールのようにひいて守ってのカウンターというのに比べると、日本側にはや りやすい形となりましたが、それでも相手FWの早さや巧みなドリブルやシュートには時々「うまい」と声が出ることもあり、見応えのある攻防が続きました。
 20分を過ぎて左の駒野のシュート(DFの体に当たる)、右からの早いクロスと、日本の攻撃が1波、2波と続き、左CKとなりました。

 右から左、左から右へと揺さぶった後で、当然、日本も相手も疲れていましたが、この左CKを遠藤はショートコーナーで近くの中村俊輔に渡し、俊輔がペナ ルティエリアの根もと(ゴールラインとエリアの縦ラインの交わるところ)ギリギリからクロスを上げ、高原が飛び込むようにヘディングを決めました。
 面白いことに、テレビの画面はリプレーを見ても遠藤がコーナーでキックする姿はなく、いきなりパスが俊輔に渡るところから始まっています。
 にぎやかなことで知られるA局の画面ではCKになったあと、しばらく給水の必要性の話が出ていたのですが、解説者たちも、テレビのカメラを操作する専門家も気づかぬ早いうちに、遠藤-俊輔のパスが出たことになります。

 俊輔は試合後のテレビインタビューにさりげなく、リスタートを早くやれるときはできるだけ早くやろうと考えていたこと、そして監督の指示(すぐメディア は聞きたがります)があっても、選手たちはそれをどういうふうに実行するかを話し合っているという意味のことを、チラリと語っていました。
 ゴールにボールを叩き込んだのは高原ですが、彼は第1波攻撃、第2波攻撃では左サイドにいて、左CKになったときにファーサイドのほうへ移動し、外側から俊輔のキックに合わせて相手DFの前(ニアサイド)へ飛び込むようにヘディングしたのです。

 高原のフランクフルトでのゴールの積み重ねのシーンは残念ながら見ていませんが、6月のキリンカップでも、自分の“戦場”への彼のアプローチのうまさに感心しました。
 多くは左に開いてから中へ、あるいは右へ動いて、ボールが来るスペースをあけておき、相手DFの視野の外からそこへ入るのですが、そのタイミングはまさに天下一品。この得点で彼のその経路を見ようとしたのですが、どのリプレーにも映っていなかったのです。

 ということは、再度申し上げると、それほど、遠藤-俊輔-高原の早いプレーはカメラにも捉えられなかったということになると思います。
 そして、そのタイミングで正確にボールの底を蹴ってGKに取られないボールを浮かしてゴール前に落下させた俊輔の左足のキックの技術も、難しい姿勢ながら正確なヘディングでボールを叩いた高原のうまさも、それが当然のように実行されるのに感服しました。

 高原はゴールを決めた後、まず俊輔に駆け寄りました。俊輔は高原、次いで遠藤に「良くやったネ」というふうに手を挙げましたが、その左手には給水のペットボトルを持っていました。彼らは給水の時間を惜しんで早いリスタートをしたのかもしれないと、思いました。

 こういう細かいところはテレビでないと見られないことがありますが、現地でスタンドの記者席から見下ろすと全体の動きはとてもよく分かります。そして一 人一人の選手の姿勢で何かあったということも頭に残り、それをテレビ画面で確かめることもあります。今回はテレビだけのもどかしさを感じつつの、新しいテ レビ観戦の楽しみの一つでした。

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