日本vs北朝鮮を見て その2
2月9日
日本 2(1-0 1-1)1 北朝鮮
◆早いうちに1-0とリードしながら、残りの 40分間にシュートを3本しか打てなかった日本に対して、北朝鮮側は、エリア内にほとんど侵入を許さなかったことと、自分たちも6本のシュートを放って互角の形を保ったことで希望を持ったハズだ。尹正水(ユン・ジョンス)監督も、29分と43分に行った選手交代がうまくいったことで挽回のチャンスありと見たことだろう。
◆そういう北朝鮮の意気込みは51分のチャンスを生む。
◆この文人国(ムン・イングク)のヘディングでスタンドの日本サポーターをヒヤリとさせた場面は、
1)田中のファウルのあとのFKを、いち早く右に開いていた金映水(キム・ヨンス)にわたし、
2)金が速いドリブルでペナルティエリアの右サイドを突破。
3)追走する中澤をフェイクで減速させ、クロスをゴール正面へ送った。
4)このボールに合わせ、文がジャンプヘッドした。
地面に叩きつけられてバウンドしたボールは川口のファインセーブでCKとなったが、この田中の反則タックル(レフェリーがイエローを出したのには驚いたが)の伏線は、中盤でのルーズボールをスライディングで味方に渡した北朝鮮側の粘り強さにあった。
◆ 彼らの激しさとボール奪取にかける執念は、ときにはルールから逸脱するが、この日の主審は寛容だったから、いわゆる彼らの「タマぎわの強さ」が余計に光ることになった。(この主審はサウジでは評判がよくて、2006年のドイツ大会にも推薦されるという話があるらしい)その北朝鮮側の、日本に負けないという反発心が顕著にあらわれたのは60分のファウル。記者席(メインスタンド側)の真下に近いタッチライン近くで、高いバウンドのボールを鈴木と競り合った漢成哲(ハン・ソンチョル)が鈴木を後方から手でひっぱるとともに、ボールをヘディングしようとしたことだ。明らかに危険なプレーなのだが(レフェリーは見逃した)、私は北朝鮮の選手たちの、何としても競り合いに勝ちたいという強い気持ちを見る思いがした。
◆この反則による日本のFKのあと、日本のパスを奪った北朝鮮が待望の同点ゴールを生む。それはまことに勢いに乗った攻撃の展開によるものだったが、同時に体の強さや速さだけでなく、金映水のうまさがからんでいたことも覚えておきたい。
◆彼らの攻撃は、
1)まず遠藤が左タッチラインと平行に鈴木へ送ったボールを、鈴木の前でインターセプトすることから始まった。
2)そのボールを、戻ってきた李漢宰(リ・ハンジェ)が拾って、ハーフラインのやや中よりにいた金映水にパス。
3)体を自陣ゴールに向けて受けた金は、短く後方へドリブル。奪いに来る遠藤をターンでかわし、前へ向き直ると、右前の李漢宰にパスした。
4)ノーマークで受けた李は、中央の金永峻(キム・ヨンジュン)へ。
5)金はこれを後方に戻して金映水へ。
6)そこからダイレクトに左前方の文人国につながり、
7)ひとつ止めた文が左サイドのスペースへ送ると、そこへ南成哲(ナム・ソンチョル)があがってきた。
8)ノーマークでボール受けた南はペナルティエリア左角近くに持ち込み、左足で強いシュート。GK川口はクロスを予想したようで、ニアへ飛んだボールを全く防げなかった。
◆このゴールのポイントは、まず南選手のニアへの強烈なシュートにあるが、その前の早いペースのパス攻撃の展開で、南に広いスペースでノーマークでシュートできるチャンスを与えたこともある。そしてさらに、その早い展開の前に、金映水の巧みなキープと方向転換で、後方から走り上がる人数が増えたことが大きい。
◆こうしてみると北朝鮮は、特有の“がんばり”だけでなく、ゴールを奪うための展開の巧さも持っているといえる。
◆ようやく同点とした北朝鮮に対し、日本はすかさず高原、ついで中村俊輔を投入する。技術力も経験も優る2人の新手の加入によって双方の力関係が一変し、それから日本の一方的な展開となって、最後に2-1の勝利をつかんだことはすでにお伝えしたとおり。
◆こんどの両者の対戦で、さまざまな教訓があった。なかでも、ラン・プレー、速い動きを特色とする両チームにあって、後半に双方が決めたゴールの道筋が、有効な個人キープからスタートしていることが面白い。
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
コメント