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2005年1月

大久保嘉人のデビュー戦

2005/01/25(火)

強気の姿勢で相手をたじろがせ
チャンスを掴んだヨシト流のゴールとアシスト

【朗報は雑誌社から】
◆1月10日の夕刻にある雑誌社から「大久保が初出場で1得点1アシストしました。コメントを下さい」という電話があった。テレビをまだ見ていないから、どんな様子なのかはわからないが、「大久保嘉人という選手は、“この試合”と決めて、自分の気持ちと体調をそれに合わせると、よいプレーをし、よい結果を出せる。Jリーグでも、オリンピックでも、そうだった。デビュー戦がよかったというのは、それだけに彼の気持ちがこもっていたのだろうと思う。むしろ問題は、彼の能力を知った各チームが対策を取るようになる第2戦以降だろう」と答えたのだが……。

【まず速さをみせる】
◆夜半のWOWOWのテレビを見ると、大久保らしさが随所に出ていてとても面白かった。早いうちのケガも、「ヒザを蹴られてケガをして、そこで開きなおって固さがほぐれたと思う」(新聞報道による)とプラスにしたようだが、何よりも、前半にまず「速さ」を見せたのがひとつのポイント。後方からのボールを追って、相手DFとGKの処理が遅いのにつけこんで、“あわや”という場面をつくった。DFがクリアしたのを背後から足を出して当て、リバウンドが左ポストわずか外へ出ていった。おそらく相手側は、この小柄なFWは予想以上に速いと思っただろう。
 小柄な選手がリーガ・エスパニョーラでプレーする以上、その特色のひとつがスピードだと考えるのは常識だが、いつトップスピードになるか、どこで加速するかなどは、ピッチで当たってみなければ実感できない。背後から走りこんできた、このときの大久保の速さには、“これは要注意”——と思ったハズだ。

【自信あり気な態度と自らの仕掛け】
◆31分に右オープンスペースへ出たボールを追ったときも、パスと本人のランニングのタイミングがピタリというわけでなく、いささかスタートが遅かった感はあるが、それだけにスペースへ走り上がる彼の速さは際立って見えた。このときのキープが第2のポイント。彼を追ってきたDFと1対1になって、フェイントをかけて抜こうとした。失敗はしたが、“自信あり気”なキープと、自分から仕掛けたのがよかった。
 日本のプレーヤーには、オープンスペースで相手DFと1対1になっても、自分から突破しようということより、まず、仲間を探してパスを出すものが多いが、最初の1対1の場面で脅し(おどし)をかけたのは、いかにも大久保らしい。
 このフェイクは、左足でまたいで、右のカカトでタッチして相手の左側(大久保から見て)へボールを通し、自分は右側をスリ抜けるやり方。Jリーグでも、ゴールライン近くで彼が見せるひとつ。このときは相手の足に当たって不成功だったが、ここで彼が仕掛けたことが後に響いてきたハズだ。

◆この後、いくつかいいプレーがあったが、詳細は省略するとして、後半12分、0−1から彼のクロスによって同点ゴールが生まれる。
 右のタッチライン近くで彼はタテのパスを受けてキープする。DFの2人が大久保の近くにいたが、どちらの接近もゆっくりしていた。その余裕のなかで、大久保はゴール前へクロスを送った。ボールはファーポスト側にいたガルシアの頭に合い、そのジャンプヘッドはゴール右上いっぱいに決まった。

◆ この2人のDFの大久保への寄せが遅かったことは、彼がこれまでに見せた、速さと仕掛けるテクニックを警戒したからと言える。もちろんこの寄せの遅いところに、いまのラ・コルーニャの低迷の因があるのかもしれないが、そうであれば、余計に大久保のそれまでのプレーが脅威になったと考えられるだろう。
 大久保にあれほどの余裕を与えれば、右足で狙ったところへボールを届けるのは難しいことではない。この同点ゴールはチームを元気づけ、大久保自身もゴールに絡んだことで自信がついただろう。次に左オープンに走ったときも、相手の1人に対して仕掛けて、これも失敗したが、その細かいステップワーク(自分ですべった)はホームの観客を喜ばせたハズだ。

◆ そして相手のルケの2点目で再び1−2とリードされたあと、後半19分に大久保のゴールが生まれる。右サイドからMFカンパーノが送ったクロスを、DFの背後から現れ、ジャンプヘディングした。ゴールキーパーが飛び出して届かなかったボールで、彼の落下点を見きわめるうまさ、ジャンプの高さ、ヘッドのうまさが初ゴールを生んだ。
 上背はないけれど、大久保嘉人はヘディングが上手だ。それも、ゾーンへ上がってくるボールを見きわめ、敏捷さを生かすポジショニングとジャンプが素晴らしい。Jリーグでもオリンピックでも、彼はこのヘディングで点を取ってきたが、それがスペインでの初ゴールとなった。

◆ デビュー戦での1ゴール1アシストは彼の強い運といえるかもしれない。中田英寿がペルージャでの第1戦でセリエAの名門ユベントスから2ゴールしたが、あのときも、彼が右の一番得意な角度へ上がってきたとき、ユベントス側の警戒は薄かったように見えた。今回も、相手のラ・コルーニャがやや低迷中であったことが、大久保に幸いしたかもしれない。しかし、そうした運をつかむ力が大久保にあったともいえる。相手に脅威を与えつつ、チームメートにこういうプレーができるという彼の技術の個性を見せ、それが試合の結果につながったのだから、素晴らしいデビュー戦だった。

◆しかし、プロフェッショナルは、一度だけでなくコンスタントに働かなければならない。相手側の警戒が強まるこれからこそ、彼の本番になる。彼と彼の周辺の関係者が、これから、大久保嘉人がコンディションを維持し、練習と試合にうちこめる環境を作って、1試合1試合に気持ちを集中させてゆくことが、今後のポイントとなるだろう。

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