強いイランを相手に、平山相太の期待通りのプレー
キリンチャレンジカップ2004
2月8日 (埼玉スタジアム2002) 19:23
U-23 日本代表 1(1-0 0-1)1 U-23 イラン代表
◆前日のフル代表の試合が、相手とのレベルが違うために全体が気の抜けた感じだったが、このU-23の試合は互角の相手だったから、とてもいい試合になった。そしてまた、平山相太という待望の大型ストライカー、高校選手権で活躍した逸材がオリンピックを目指す代表チームに加わったことで、日本中の注目を集めるカードとなった。キリンチャレンジカップ2004のU-23の第一戦は、日本サッカーの歴史に残る試合となったといえる。
◆その平山相太は、前半19分にヘディングで先制ゴールをあげたから、翌日から日本のサッカーは平山一色にようにメディアが変わったのも無理がない。私のところにも、平山相太と釜本邦茂(メキシコ五輪得点王)との比較を聞きたい、という声がたくさん来ている。
◆この平山のゴールは、本人が「クロスがよかったから」というように、大半は左サイドをドリブルで突破した田中達也がゴールライン深くまで入って理想的なクロスを送ったところにある。そしてまた、その田中への支援は、今野と山瀬の協力による、相手ボールの奪取と、山瀬のいいタイミングのスルーパスから。いわば、日本サッカーの十八番(おはこ)によって生まれたものだが、そうして積み上げたチャンスを18歳の平山が長身を生かしたヘディングで締めくくったところに、明るさがあった。
◆190cmという長身。それでいて、小嶺監督の国見高校特有の練習、とくにランニングによって鍛えられたしっかりした足腰は、昨年の高校選手権で見せた「2年生のプレー」から「最上級生のプレー」となり、その間に日本代表を経験し、国際試合で自らのプレーが通用することを知ったことも自信になっているはず。高校選手権でのシュートの際の落ち着きは、右も左もすでに型ができていることに加えて、高校レベル以上の場を踏んだことの経験にもよるだろう。相手をかわして出たときに、シュートに集中する、つまり最後までボールを見てインパクトに入るという、優れたストライカーの基礎を備えているのが私にはうれしい。(釜本もそうだった。)
◆少し話がそれた。このヘディングゴールにもどすと、田中のドリブルを見ながら、平山が自分のヘディングの場所をファーポスト側に選んだのも、適切。GK を越えて自分の方に飛んできたボールを、ジャンプして上で待って、決して力いっぱい叩くのではなく、がら空きのゴール中央へしっかりコントロールしたボールを送り込んだ。高さに対する自信から生まれた余裕とは言いながら、こうしたプレーはやはり、非凡なものを持っている。
◆平山相太はこのゴールまでに、後方からの高いボールを4度、相手のDFと競り合って、すべて自分の頭でとっている。DFにしてみれば、余裕がないときでも、この大きな目標の上へボールを蹴り上げておけば—という安心感があるだけでも、彼の存在はディフェンス陣にも好影響を与えた。
◆タイムアップ直前、決定的な場面で再び平山がクローズアップされた。日本が力をふりしぼって攻めたて、奪って、つないで、徳永からのいいパスがゴール正面へきた。相手DFがヘディングで取りそこねたのを、平山が胸でトラップし、ワンバウンドのボールを右足でとらえて強烈なボレーシュートした。GKラハマティが手にあててCKとなった。
胸のトラップからシュートへ入ってゆく動作もなめらかで申し分なかったが、コースがGKのリーチだった。2人のDFの間にいて、しっかりボレーで蹴る。ボールがバーより低く押さえられているところが素晴らしい。
◆彼のシュートは先制ゴールのヘディングと、この胸のトラッピングからのボレーシュートの2本だけだった。パスの出し手となる選手たちとの間にこれからコミュニケーションがよくなり、シュートチャンスが増えるようになれば、得点コースは増えるだろう。
◆この試合では、ブラジルから日本に国籍をかえた田中マルクス闘莉王がDFの中央に入って、新たな戦力となることを示した。
ファイティングスピリッツを表面に出すプレーヤーで身長を生かしてのヘディングは平山とともにFK、CKでの武器になるとの予想だ。
この世代は技術もあり、若いうちからJリーグの試合経験を積む選手も多いので、個人技術、チーム戦術に対する理解力もある。ただしこういう上手で早く、すぐ役に立つプレーヤーを集めると、大型プレーヤーが入ってこない傾向となりがちだが、下の年齢層から平山、異邦から闘莉王を加えたことで、高さの点でも補いをつけた。
◆フル代表に抜擢されながら調子を崩している大久保、これもフル代表にいる石川をはじめ、多くの才能がこの日は働き場がなかったが、オリンピックの1次予選だけでなく、フル代表への足どりも見込んで、注目度はこれからも増すだろう。
◆平山のことで、字数を使ってしまった。他のメンバーについては、つぎの機会にしたいが、FKでの失点についてひとつだけー。
相手のパスを止めた田中闘莉王が左手を使ったと判定されてペナルティエリア外、右よりの地点でのFKとなった。日本のカベは6人。その左端に相手の身長 188センチのエビラヒミが立ち、ボールの近くに左利きのバダヴィと右ききのモバリがいた。まずバダヴィがスタートしたが蹴らず、モバリが蹴った。コースはエビラヒシがカベから離れたあとの空間だった。
GK林はバダヴィの陽動に惑わされて、キックより先に逆に動いたのを後悔することになったが、そうでなくても手が届いたかどうか、シュートの巧さと相手のフェイクを評価すると同時に、先に動くことの危険を改めて認識しなければならない。
◆イランの激しさとスピード、そしてテクニック試合の駆け引きの巧さのおかげで、試合はまことに面白かった。
このキリンチャレンジカップ2004を見ることで、アテネオリンピックのアジア予選のレベルもまた、なかなかのものであることを知るチャンスとなった。
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