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2004年2月

強化試合第2弾 対イラク戦を終えて

2004/02/18(水)

相手がどうであれ、実践を積んだ4FB、MFは層が厚く、
FWはこれから連携プレーでレベルアップ

   2月12日 (国立競技場) 19:23
   日本 2(0-0 2-0)0 イラク

◆2月7日の「キリンチャレンジカップ2004 GO FOR 2006」のあとを受けて、対オマーン戦までの強化試合第2弾となった。戦場となってイラクのサッカーは辛い環境にあるハズだが、この日の戦いぶりは積極的ですばらしかった。        

        そのイラク代表の気迫とボールを奪い合うときの個々の粘り強さに、日本代表は前半は全く受け身になってしまった。

◆5日前のマレーシア戦とほとんど同じスターティングラインアップ(FWの本山が柳沢に代わっただけ)のチームは動きが鈍い。走らない日本のサッカーはパ スも回らない。こうなってはチーム全体でボールキープはできず、パスを交換しても前には出られず、うしろへ下げてゆく。そのバックパスが奪われ、受けると ころを狙われると、また混乱してビクついてしまう。

        結局は中田英寿がいないと、こうなるのだナと思うことになる。

        ◆それでも、その間耐えて、やがて遠路の相手の動きが鈍りはじめると日本のパスが通り、こんどは活発に攻め始める。それが35分ごろからだった。  

相手が強く出て来たときにピンチもありながら失点しなかったのは何よりだが、GKが楢崎正剛であったことが大きな原因だろう。DFのミスから完全に突破さ れ、ノーマークの相手に立ち向かったときも前に出てポジションをとってからは動かず、相手の方が姿勢をくずして強いシュートをしてしまうことになった。  

        2002年ワールドカップで活躍したドイツのGKカーンのプレーを思い出させるほどの、楢崎の好守だった。 

        ◆後半に2ゴールをとったのは、ひとつは三都主のクロスを柳沢がヘディングしたもの。小笠原が相手DF2人の間を通したみごとなスルーパスを送り、三都主がゴールラインぎりぎりから左足でクロスをかえしたのをニアへ寄った柳沢がヘディングした。          

        三都主のスピードと左利きの利点(フルスピードで走った左足でダイレクトで中へパスを送った)が重なった。それを引き出した小笠原の"眼"がすばらしい。          

        2点目も三都主からで、今度は自分でドリブルして、久保へパスを送り、そのリターンをうけてシュートした。彼の得意の角度のキックのパスと同じ得意の角度でのシュートだった。          

◆小笠原と遠藤と藤田といったミッドフィルダー陣は不調のなかでも、それぞれの巧さをみせた。2得点とも、攻め口としては悪くはないが、シュートはもし、 相手のGKがこの日の楢崎であったら、いや楢崎でなくとも韓国の李雲在であったら、ゴールしていたかどうかー。  

        シュートそのものということになると、さきのマレーシア戦と同様にまだまだ攻撃力上々とはいい難い。  

        ◆2試合を経て、欧州組を中心とする日本代表のミッドフィルダー群は国内組の向上で、質量ともに豊富になった。FWは結局、久保の大爆発は1回だけ。大久保には初ゴールのチャンスもなかった。

ジーコと日本代表は、2002年の10月16日から1年半のうちに20試合を行なって、2006年ワールドカップのアジア予選の第1戦を迎えることにな る。その間、宮本、坪井と山田暢、三都主のDFライン(中澤もときに加わる)がレベルはともかくとして、安定を保ち、ミッドフィルダー陣は、より豊富に なった。FWは中盤グループと連携を強めながら、公式戦を重ねる中での成長に期待しよう。

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強いイランを相手に、平山相太の期待通りのプレー

2004/02/17(火)

 キリンチャレンジカップ2004
 2月8日 (埼玉スタジアム2002) 19:23
 U-23 日本代表 1(1-0 0-1)1 U-23 イラン代表 

◆前日のフル代表の試合が、相手とのレベルが違うために全体が気の抜けた感じだったが、このU-23の試合は互角の相手だったから、とてもいい試合になった。そしてまた、平山相太という待望の大型ストライカー、高校選手権で活躍した逸材がオリンピックを目指す代表チームに加わったことで、日本中の注目を集めるカードとなった。キリンチャレンジカップ2004のU-23の第一戦は、日本サッカーの歴史に残る試合となったといえる。

◆その平山相太は、前半19分にヘディングで先制ゴールをあげたから、翌日から日本のサッカーは平山一色にようにメディアが変わったのも無理がない。私のところにも、平山相太と釜本邦茂(メキシコ五輪得点王)との比較を聞きたい、という声がたくさん来ている。

◆この平山のゴールは、本人が「クロスがよかったから」というように、大半は左サイドをドリブルで突破した田中達也がゴールライン深くまで入って理想的なクロスを送ったところにある。そしてまた、その田中への支援は、今野と山瀬の協力による、相手ボールの奪取と、山瀬のいいタイミングのスルーパスから。いわば、日本サッカーの十八番(おはこ)によって生まれたものだが、そうして積み上げたチャンスを18歳の平山が長身を生かしたヘディングで締めくくったところに、明るさがあった。

◆190cmという長身。それでいて、小嶺監督の国見高校特有の練習、とくにランニングによって鍛えられたしっかりした足腰は、昨年の高校選手権で見せた「2年生のプレー」から「最上級生のプレー」となり、その間に日本代表を経験し、国際試合で自らのプレーが通用することを知ったことも自信になっているはず。高校選手権でのシュートの際の落ち着きは、右も左もすでに型ができていることに加えて、高校レベル以上の場を踏んだことの経験にもよるだろう。相手をかわして出たときに、シュートに集中する、つまり最後までボールを見てインパクトに入るという、優れたストライカーの基礎を備えているのが私にはうれしい。(釜本もそうだった。)

◆少し話がそれた。このヘディングゴールにもどすと、田中のドリブルを見ながら、平山が自分のヘディングの場所をファーポスト側に選んだのも、適切。GK を越えて自分の方に飛んできたボールを、ジャンプして上で待って、決して力いっぱい叩くのではなく、がら空きのゴール中央へしっかりコントロールしたボールを送り込んだ。高さに対する自信から生まれた余裕とは言いながら、こうしたプレーはやはり、非凡なものを持っている。

◆平山相太はこのゴールまでに、後方からの高いボールを4度、相手のDFと競り合って、すべて自分の頭でとっている。DFにしてみれば、余裕がないときでも、この大きな目標の上へボールを蹴り上げておけば—という安心感があるだけでも、彼の存在はディフェンス陣にも好影響を与えた。

◆タイムアップ直前、決定的な場面で再び平山がクローズアップされた。日本が力をふりしぼって攻めたて、奪って、つないで、徳永からのいいパスがゴール正面へきた。相手DFがヘディングで取りそこねたのを、平山が胸でトラップし、ワンバウンドのボールを右足でとらえて強烈なボレーシュートした。GKラハマティが手にあててCKとなった。

胸のトラップからシュートへ入ってゆく動作もなめらかで申し分なかったが、コースがGKのリーチだった。2人のDFの間にいて、しっかりボレーで蹴る。ボールがバーより低く押さえられているところが素晴らしい。

◆彼のシュートは先制ゴールのヘディングと、この胸のトラッピングからのボレーシュートの2本だけだった。パスの出し手となる選手たちとの間にこれからコミュニケーションがよくなり、シュートチャンスが増えるようになれば、得点コースは増えるだろう。

◆この試合では、ブラジルから日本に国籍をかえた田中マルクス闘莉王がDFの中央に入って、新たな戦力となることを示した。

ファイティングスピリッツを表面に出すプレーヤーで身長を生かしてのヘディングは平山とともにFK、CKでの武器になるとの予想だ。

この世代は技術もあり、若いうちからJリーグの試合経験を積む選手も多いので、個人技術、チーム戦術に対する理解力もある。ただしこういう上手で早く、すぐ役に立つプレーヤーを集めると、大型プレーヤーが入ってこない傾向となりがちだが、下の年齢層から平山、異邦から闘莉王を加えたことで、高さの点でも補いをつけた。

◆フル代表に抜擢されながら調子を崩している大久保、これもフル代表にいる石川をはじめ、多くの才能がこの日は働き場がなかったが、オリンピックの1次予選だけでなく、フル代表への足どりも見込んで、注目度はこれからも増すだろう。

◆平山のことで、字数を使ってしまった。他のメンバーについては、つぎの機会にしたいが、FKでの失点についてひとつだけー。

相手のパスを止めた田中闘莉王が左手を使ったと判定されてペナルティエリア外、右よりの地点でのFKとなった。日本のカベは6人。その左端に相手の身長 188センチのエビラヒミが立ち、ボールの近くに左利きのバダヴィと右ききのモバリがいた。まずバダヴィがスタートしたが蹴らず、モバリが蹴った。コースはエビラヒシがカベから離れたあとの空間だった。

GK林はバダヴィの陽動に惑わされて、キックより先に逆に動いたのを後悔することになったが、そうでなくても手が届いたかどうか、シュートの巧さと相手のフェイクを評価すると同時に、先に動くことの危険を改めて認識しなければならない。

◆イランの激しさとスピード、そしてテクニック試合の駆け引きの巧さのおかげで、試合はまことに面白かった。

このキリンチャレンジカップ2004を見ることで、アテネオリンピックのアジア予選のレベルもまた、なかなかのものであることを知るチャンスとなった。

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