続・キリンチャレンジカップ2003
キリンチャレンジカップ2003
11月19日 (大分スポーツ公園総合競技場) 19:20
日本 0(0-0 0-0)0 カメルーン
【日本の得点機】
◆前回は前半、日本の唯一のシュート場面12分の高原のシュートとそのあとの小野伸二の「幻のシュート」のビッグチャンスと、26分の藤田のボール奪取につづく、これも幻(まぼろし)となったドリブルシュートのお話しをした。小野、藤田ともにシュートの構えにはいり、バックスイングからインパクトにかかる瞬間に、後方から走り込んできたカメルーンの選手の足が伸びてボールに触れ、そのために小野も藤田も蹴ることができなかった。
◆どちらの場面も高い位置(相手ゴールに近いところ)で、相手ボールを奪っての攻めであったこと、前者はパスの組み立て、後者は藤田が仲間の動きを見ながら(利用しながら)自らドリブルシュートへ持っていたもの。その両方の、いかにも日本代表らしいチャンスがあったこと、そしてそれを最後のシュートのインパクト(ボールに足を当てる)のときに、つぶされたことー、日本の攻撃の組みたての素晴らしさと守備網を崩されながらぎりぎりのところでシュートを妨害したカメルーンの特色があらわれた局面といえた。
◆後半の日本のシュート5本を見ると
1本目 53分に中田がFKを狙った。好位置だったがバーを越えた。
2本目 57分、柳沢敦が左へ流れて、右サイドへ出た藤田からのパスを、エリア中央右より、ゴールから16メートルでノーマークで受けたが、トラッピングが大きく、DFに寄せられシュートは左ポストの外へ。
3本目 66 分、中田英寿がゴール正面20メートルからシュート。GKの正面へ。(小野—高原—バックパスー中田とつないでのフリーシュート)ボールを受けとるときのトラッピングでボールが小さく浮き、落下後の2つ目のショート・バウンドを蹴った。中田らしく落ち着いた動作だったが、ボールにはそれほどの力はなく、またコースも平凡。−中田の場合だけでなく、この日のグラウンド・コンディションがが各シューターに微妙な影響を与えていたかもしれない。
4本目 71 分、高原直泰のエリア内での反転シュート。GKが防ぐ。三都主の左からのスローインを受け、ゴールエリア左角の2メートル手前で反転し右足でシュート。DFの足の間を抜けたボールがゴールに向かったが、GKカメニが横に倒れながらキャッチ。すぐ後方にいた藤田に渡さずシュートを選択した。2人のディフェンダーの裏から現れた(スローインだからオフサイドにはならない)位置どりは素晴らしかったが−。
5本目 87分、遠藤保仁。藤田と80分に交代した遠藤のエリア外からのシュート。(GK正面)この攻撃は相手の攻めを防いで
1)GK楢崎が投げたボールを
2)中田がドリブルして前方の高原へ
3)高原は後退しつつ斜め後方の遠藤へ
4)遠藤は小野へ横パス—とハーフラインを挟んでのパス交換ののち
5)ハーフライン中央やや左から小野がロブのボールをエリアぎりぎりへ送り
6)それを大久保が受けて相手DFを背にキープしたのち
7)バックパスを遠藤に送り、遠藤が止めないでシュートした。 見事なパスワークだが、シュートチャンスに相手DFが少し遅れながらも体を寄せにきていた。
◆サッカーには攻めと守りがある。この日カメルーンを相手にいくつかピンチはあったけれど、無失点だったのは、守りの面でのチームと個人の向上といえる。その守りについてはまた別にふれるとして、とりあえず、得点力という点からそのフィニッシュの場面を抜き出してみた。得点できなかったのは、フィニッシュのシュートそのものがどうなのか、シュートのひとつ手前のプレーに原因があるのか、あるいは、シューターにボールが渡る前に、もうひと工夫がいるのだろうかー。
【点の取れるプレーヤーとは】
◆柳沢敦に代わって69分に大久保嘉人が入った。彼は先述の遠藤へのパスは左サイドでのキープや、あるいは右サイドからのクロスといったいくつかのプレーにかかわったが、一番の見せ場は82分の左ポスト付近のプレーだった。
◆この攻撃は、相手の攻め込みから左サイドの長いスローインをキャッチした楢崎が、戻ってきた高原へ投げたのに始まり
1)高原がスクリーニングでキープし
2)3人に囲まれながら遠藤に小さく浮かしたパスを渡し
3)遠藤は数メートルドリブルして、ハーフラインの中央から右へパス
4)それを受けた中田がドリブルののち、左へロングパス
5)高くあがったボールが落下した地点は、ゴールエリア左角の近くで
6)大久保は胸でボールを止め、右足アウトサイドで切り返した。
7)奪いにきた相手のエバレが左足にあて、ボールは空中に浮いて、大久保の後方に落ちた。大久保がこのボールをエバレを背にしてキープ、反転して前を向き、もう一人、向かってくるメトモをかわそうとしたが、その右足にあたってCKとなった。
◆カメルーン監督のいう「点の取れるプレーヤー」(前回参考)とは、こういうところでシュートしゴールを奪う選手だろう。そのゴールを生むためには
A)空中のボールの処理力(例えば胸のトラッピング)とそれにつづくシュートへの移行。
B)また、今回のように胸のトラッピングがやや前に落ち、バウンドするのを追ったとき、奪いにきた相手との対応(右足アウトで切り返す他に方法はあったかー)といったことが問題になるだろう。
◆私たちは2003年のキリンチャレンジカップ・アフリカシリーズで、攻撃がよくなってゆくのと、そのフィニッシュの問題を見ることができた。ただし、この攻撃展開の向上は中田英寿を軸としての話である。
12月の東アジア選手権の3試合は中田英寿抜きとなり、また別の楽しみを期待することになる。
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