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2003年9月

好試合、1失点、無得点。 ゴールを奪い取る力は?

2003/09/24(水)

 キリンチャレンジカップ2003
 9月10日 (新潟スタジアム ビッグスワン) 19:26
 日本 0(0-1 0-0)1 セネガル

遠来チームの充分な準備のおかげで好試合。互角の戦いは日本代表が1失点、無得点で終わる。中田英寿、中村俊輔を軸とするチーム内の連係向上を(前回より骨のあるチームを相手にして)喜び、高原のいないフィニッシュのもどかしさ、小野のデリケートなボールタッチの効果を久しぶりに確認した満足〜さまざまな思いのなかからいくつかを反芻(はんすう)しよう。

【セネガルの先制ゴール】

6分の右CK、アンリ・カマラの右足キックでボールは回転しつつ内にカーブを描いて、ペナルティマーク近くに落下するのを、193センチの長身、パプ・ブーバ・ディオプが高く上がり、ジャンプしようとする坪井(179センチ)にのしかかるように上体を突き出して、頭でボールをとらえた。ボールはGK曽ヶ端の左手側の1メートルばかり離れたゴールへ飛び込んだ。

両チームのメンバーの体格をみれば、こういう場面は当然予想されたハズ。なにしろ開始時にピッチに立った両チームのフィールドプレーヤー10人の身長を比べると、下表のようになる。    

日本 セネガル    0 190以上 1    0 187〜189 1    0 184〜186 4    1 180〜183 1    5 177〜179 2    3 174〜176 1    1 173以下 0

身長の差はヘディングのとき、ある程度のハンデとなる。また、背が高いものは普通は足も長く、それがリーチ(足の届く範囲)に影響する。そしてその長い足が素早く動くのが、サハラ以南のアフリカ系選手に多い。

となると、当然FKやCK、つまり停止球を妨害を受けずに蹴ることのできるチャンスは、空中戦において、セネガルが優位に立つと誰もが予想できたハズ。それを日本の選手、とくにDFたち、ひとりひとりが、どのように受け止め想定していたのだろうか。

【高原不在のFW】

セネガルは早いうちに、1-0としたため、そのあとの展開がずいぶん楽になった。しっかり守ってカウンターを狙えばいいのだから。

この国の優れた素材は少年期からフランス・リーグの各クラブの育成組織に入って成長するから、現代のサッカーを充分理解し、組織的プレーの訓練も積んでいる。そのセネガル相手に、こういう流れになると、パスをつないで攻め込む日本のやり方では、相手が元気な前半にゴールを奪うのは、よほどの"何か"がなければむずかしい。とくに、この日は高原という、中央でのパスの受け手を欠いたため、一番単純なパスを出せずに、第2、第3列の選手たちは苦労した。それでも、チャンスはいくつかあったのは、チーム力のあがっている証(あかし)といえた。その4本のシュートは、柳沢の5分(左足)、8分(右足)、18分(右ボレー)の3本と21分の中村のFK(左上角、GKが防ぐ)で、いずれも得点にならなかった。柳沢にとって惜しかったのは、18分の3本目で、これは

1)左サイドでの中村、中田のパス交換から
2)中田がドリブルして右へ送り
3)大久保がオープンスペースへ追走してこのボールを取り
4)中央へクロスを蹴る
5)相手DFにあたって、ファーポスト側にいた柳沢へ落下
6)柳沢がボレーシュート(ゴールをオーバー)したものだった。

柳沢のシュートそのものをビデオのリプレーで見れば、落下するボールをよく引きつけて蹴っていたが、後退しながらだったためか、腰が後ろへ沈む形になり、ボールを下から蹴り上げて結局オーバーしてしまった。

この場面は攻撃の組み立ての段階で、中田のパスを大久保がゴールに近い位置で取れなかったところにも今後の課題がある。中田がドリブルしたときの大久保のポジションがよければ、パスを受けて一気にシュート体勢へ持ってゆけたハズだからである。

こういうパスの「あ・うん」の呼吸があわなければ、いいフィニッシュは生まれにくい。

【柳沢と大久保】

もうひとつ柳沢のチャンスで惜しかったのは前半31分に、左へ開いて中田からのいいパスを受けて、エリアぎりぎりにゴールラインと平行にはいってきて、左足でクロスを上げてしまったことだ。中央には大久保がひとり、相手は長身のDFが2人いたのだから、彼らの頭を越して、小柄な大久保の頭の上へ落とすボールを(利き足でない)左で送りこめる自信があったのかどうかー。それよりも、自分でなかへ持ち込んで右足でシュート(シュートしなくても、持ち込むことで、相手のDFの守りに変化が起きるし、中田へパスをもどすこともできるようになったハズ・・・)という選択を考えなかったのかどうか ーである。彼の判断がつねに「まとも」であるのが、私はかねがね惜しいと思っている。この場合、彼が浮きダマのクロスを上げるのは「まとも」には違いないが、それではきちんとポジションをとっているDFとGKを崩せていないことが多い。

【消える ー マークをはずす工夫】

大久保が64分間の出場時間で1本もシュートができなかった。国見高校を出てセレッソに入って3年目の彼は、いま、さまざまなカベにつきあたる時期である。"代表のエースストライカー"などとメディアの過大な期待を背に、Jリーグでは再び"飛び出し"からのゴールも取りはじめているが、セネガルの4FB の浅いラインではオフサイドとなることが多かった。

中盤でのボールのまわし方もあるが、本人の工夫がこれから必要となる。相手のマークをはずすのは単にゴール前だけでなく、中盤での動きにも必要だ。

彼のクラブの大先輩でもある釜本邦茂も工夫をこらし、ついに相手のマークから"消える"動きを身につけてゴールを量産した。大久保がこうした面で伸びれば、U-22代表にも、日本代表にも大きなプラスなのはいうまでもない。

シュートの数は後半の方が多く6本。セネガルも8本(前半4本)あった。大久保に代わって本山が入り、9分後に遠藤に代わって小野が起用され、その2分後、75分にDFラインのウラへ本山が飛び出し、小野からのパスがぴたりと合うという決定的なチャンスがあった。本山の右斜めからのシュートは惜しいところで決まらず。

【小野伸二のボールタッチ】

故障のため代表からしばらく離れていた小野伸二だが、彼のパスの受け渡しの際の柔らかなボールタッチはチームに違った活力を与える。後方でのパス交換で彼がからむと、そこでボールのスピードや方向が適正になり、攻撃に決定的なパスや行動を起こす前の準備に余裕ができるようになり、そこからDFのウラへの飛び出しも生まれた。

惜しかったのは90分の稲本のエリア内での走りこみと、それに続くシュート。強いシュートがGKに防がれた。

75分に柳沢に代わった黒部光昭はドリブルで相手を抜いて出て、結局はつぶされたが、彼らしい強さを見せた。残念だったのは、中村−本山とわたって本山が浮きダマのパスをゴール正面の黒部に送ったとき、黒部が胸のトラップを得意の左の方へトラップして、内側にいたDFに奪われてしまったこと。得意の形なら、相手がいても押し切れると判断したのだろうかー。

こうしてみてくると(日本にも後半にピンチはあったが)やはり攻めてゴールを奪えないのが課題となる。この課題の解決はこれまで何年も言い続けているようにシュート力の向上、シュートへ入ってゆくための動きの向上という個人技アップが第一。選手自身もその周辺も、このことを諦めて欲しくない。

古いファンなら1968年メキシコ五輪銅メダルの殊勲者、釜本邦茂(24歳)が、67年秋のアジア予選のときに比べて、本舞台では一段上のレベルになっていたことを知っている。FWはもちろんのこと、ぐんぐん上達してきた遠藤保仁や、体の強くなった本山雅志をはじめ、攻撃にからめるすべての選手の得点力アップへの取り組みを期待したい。  

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