2002年ワールドカップが終わって大会についてのさまざまな書物が出版されたが、講談社から
1)「山本昌邦備忘録」トルシエジャパンの1369日(山本昌邦著)1700円
2)「蹴球日記」岡田武史にしか書けないワールドカップがここにある 岡田武史著)1600円
3)「日本代表監督論」日本代表をつくってきた男たちの10年(潮智史著)1600円
の3冊がたてつづけに出版された。
1)はトルシエ監督と4年近く、日本代表のチームづくりにあたった山本昌邦コーチの克明なトルシエとの協力(あるいは戦い)とチームの変化・成長を個々のプレーヤーにもふれながら記したもので、まずは得難い読みもの。
ひとつの大会のあとで、これだけ詳しい当事者のレポートはこれまでも公式、非公式を問わず日本には少なかった。(1936年ベルリンと、1968年メキシコの両オリンピックについては、それぞれ丹念な記述はあるが)
2) は岡田武史のこれまでの人生にもふれながら大会観戦、放送解説にとび歩く大会の日々を綴ったもの。フランス・ワールドカップの日本代表の監督であり、クラ ブの監督コーチをつとめたキャリアを記述のなかに込め、各国の監督たちに関しては同じ立場としての配慮がうかがわれる。
3)は朝日新聞のスポーツ記者、潮智史が94、98、2002の3大会を取材、とくに日本代表を予選からずーっと見てきた上での監督論、トルシエに関してはある時期トルシエ解任報道に熱心にみえた新聞社にいる人だけに興味のあるところ。
多くの人に、いま一番の興味はトルシエというフランス人の監督についての話と、とくに第2ラウンド初戦、対トルコ戦のメンバー決定への経緯だろうが、それについても、書かれているから、大会の半年後に改めて読んでみるのも面白いと思う。
私 のこれらについての感想は別の機会に述べるが、トルシエという監督については、彼は能力いっぱいに働き、若いプレーヤーに目をつけ、育て成果をあげた。た だし、日本開催というまたとない機会を捉えて、折角ついた実力に(暑さのハンデをプラスにして)上位にゆけるチャンスを失ったことは確かである。
こ のトルシエより他に外国のいい監督を招く力があったのか、日本人のなかから選んで仕事をさせる力が協会に、あるいは日本サッカー界全体(メディアも含め て)にあったのかどうか。結局はトルシエを招いたのが日本サッカーの実力だったのだろうと思っている。カルロス・ゴーンさんを招いたのはわが国の自動車業 界の実力だと私は思っているのだが。
ついでながら、この3冊のなかに、いぜんとして大会の公式用語にない(日本だけは使っている)「決勝トーナメント」という言葉が随所に出てくる。せっかくいい本が出てくれても、こういう点が修正されていないのはいささか淋しい。
ちょっとケチをつけたが、講談社から「フットボール ニッポン」という季刊誌が昨年12月に発行された。なかなか充実した読物がそろっていて、ジーコとのインタビュー(増島みどり)は手厚い。
大会後の出版物といえば、双葉社発行「日本サッカー史」代表篇 日本代表の85年 (後藤健生著)2000円を忘れてはなるまい。
サッカー博士ともいうべき後藤健生(ごとう・たけお)が綿密に資料を調べて書き上げ359ページの本文に巻末の64ページの記録を加えた力作だ。大正年間の極東大会からの日本代表の歩みを記したものとしては、現在これほどまとまっているものはないといえる。
もともと、こういうものは私が書かなければいけないのだろうが、私の場合、日本サッカー史はあまりに身近かすぎて、出版までに到っていない。まずは歴史に残るものを作ってもらったことに感謝したい。
そうそう、もちろんこの本には2002年大会のことも、45ページにわたって書きこまれている。
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