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続・ジーコへの期待:キックと1対1の能力

2002/11/15(金)

Tphoto820708platini_1 【再びキックのこと】

きわめて技術の高い選手だったジーコが監督になったから — といって、ジーコが代表選手の個人技術やボジションプレーについて指導する時間もないハズ。ジーコ監督によって日本代表の個人技アップを期待するのはムリだろう — という見方もできる。

しかし監督の見る目、評価が厳しければ、プレーヤーの反応もまた違ってくるものだ。

2002年ワールドカップを経験して、日本サッカーの専門家達、例えばNHKで解説していた岡田武史(もと日本代表監督)などが、日本選手のキックのレベルアップが必要と語るようになったのは、いい傾向だと思う。

ただし、キックの上達というのは(他の技術のほとんどもそうだが)反復練習、つまり練習の量と、それぞれの選手の工夫による。

たとえば1984年の欧州選手権に優勝したフランス代表のミシェル・プラティニは、ロングパスやFKに定評があったが、彼はその練習のひとつとして、「ハーフラインからゴールを狙ってシュートした」と言っていた。彼が来日したときに、“取材”ではなくお茶をいっしょに飲む(彼は自分だけが取材を受けるのを嫌って、そのときは一切のインタビューを拒否した)という形で聞いた話だった。もともと長いキックが得意だった彼は、その飛距離を伸ばすとともに、ゴールを狙うことで、精度を高めた。50メートルの距離からゴールに必ずはいるようになれば、30〜40メートルはコントロールキックで、精度はさらに増すことになる。若い時期のこうした練習が、彼のFKやシュートに結びついている。

自らがこういう経験を持つコーチは、この選手のシュートはなぜバーを超えるのか、などという失敗の原因を見つけることができるし、それを修正するについて、折をみて、ヒントを伝えることもできる。

 

【ドリブルとボールを奪う能力】

ドリブルで相手の守りを突破し、相手のドリブルを防ぐ、ドイツ語でいう「カンプ・ウム・デム・バル」。ボールをめぐる戦いでは、1対1の能力が大きくものをいう。体の強さで欧米人やアフリカ人に劣る日本人は、これを補い、同時に自分たちの敏捷性を生かすために、相手のドリブルを複数で防ぎ、パス攻撃で攻める。いわゆる組織プレーを大切にしてきた。当然のことで、今後も続けなければならないが、1対1でボールを奪う能力がもう少し伸びれば — あるいは、ドリブルで相手を抜く力がアップすれば — われわれの組織的な守りも攻撃も、もっとよくなることになる。この個人能力、ボール扱いとともに対敵動作のアップも、日本代表にとっては必要となる。

鹿島アントラーズの若手層の試合では、カバーリングよりも1対1で負けないことを要求しているのはクラブの総監督であったジーコの方針というから、彼は、日本のディフェンダーの個人の防御力アップや、攻撃陣の個人の突破やキープにも気を配るハズだ。

そして何より、彼の影響によって、日本の若年層の遊びや練習に、ドリブルやボールの奪い合いが多くなることが期待できる。

(撮影:富越正秀)

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