アルゼンチン戦: 2分間、2点の差
11月20日(埼玉)61,816人
日本 0 (前半0-0 後半0-2) 2 アルゼンチン
【ベロンのプレーメーク】
来日予定にはいっていたリケルメとアイマールの姿をピッチで見ることはできなかったが、チームの中心となるベロンが、6月のワールドカップ当時の絶不調から見違えるよう — いわば本来の姿に近かったから、この日のアルゼンチンはセレステ(空色)とブランコ(白)の彼等の国旗のデザインのユニフォームを着用するにふさわしいチームだった。
【前半・互角、高原の惜しいチャンス】
そのアルゼンチンを相手に日本代表が — それも、中田(英)、小野、稲本といった中盤のスター3人を欠いて、前半はまず互角に組んでの試合だったから、日本代表クラス全体のレベルアップを改めて感じたものだ。
もちろん、それは、ひとりひとりが互角というのではなく、互角の気迫を持ちながら、日本の得意の数的優位のボールの奪い合い — を保ったからだった。決定的なチャンスは、日本の方が最初に掴んだ。中村俊輔の右からのFKが低くて、ベロンのヘッドで弾き返されたのを、名良橋がロングシュートし、その低いボールが高原の足元へとび、高原が足のウラで止めて右足でシュートしたのだった。作り上げたというより偶発的なこういうチャンスは、全くのノーマークとなることが多いが、そのチャンスを確実につかむ選手は少ない。いま絶好調の高原だったが、この右足のインサイドでなぐりつけたシュートは、曲線を描いて左ポストの外へ流れてしまった。これを決めておけが、試合の様相は違ったものになったろうし、高原にもまた大きな自信となったハズだが・・・
【アルゼンチンの1点目】
後半2分のアルゼンチンの1点目は、スタンドから見ていたものには、急に日本のDFの選手の間に隙間ができて、そこをつかれた、といった感じだが、これは、さすがにベロンと彼の仲間らしいゴール。日本が攻めて、右からのクロスに高原が合わせようとして防がれたチャンスの直後、DFのキローガからの右サイドのロングボールを中西が体で止めたときにハンドの反則をとられ、右より25メートルのFKから得点コースがつくられた。ボールを置いたベロンの右横をサネッティが前進する。しかしベロンは、すぐ斜め前のオルテガに渡す。エリアぎりぎり右よりにいたオルテガは少しキープし、これも短く中央へグラウンダーのパスを送ると、ゴール正面に左MFのソリンがはいりこんでいた。ノーマークの彼が反転して、利き足の左でシュートしたとき、秋田が防ぎにいったが、秋田の足にあたったボールはGK楢崎の逆をついて、その左手横を通りゴールへはいった。
前半に6回あったベロンのFKのうち、こういう位置からのキックはファーを狙うロブ(高くあげる)のボールだったから、日本側はFWの鈴木もエリア内に戻って空中戦に備えていた。それを短いパス2本でつなぎ、意表をついたところがやはりアルゼンチン。
【アルゼンチン、2点目】
日本vsアルゼンチンその2分後、2点目が生まれる。
左サイドで、日本のボールを奪ったソラーリがベロンにパスをし、自分はゴール前へ突進、ベロンは右ペナルティエリア角のすぐ外にいたオルテガへ送ると、オルテガが小さく前進して浮かせたクロスを送った。そこにいたのは、またもソリン。だがヘディングをしたのは、その外をうしろから走りこんだクレスポ。長身のストライカーは、ヘディングシュートの見本のような強烈なボールを右ポストぎわへ叩きこんだ。
【組織とともに1対1の守り】
2得点とも、ラストパスはオルテガから。1点目のときに、応対したのは松田。2点目は中西だったが、両DFとも、相手を自分の間合いにいれることができず、オルテガはFKを蹴るように余裕を持って蹴ったから、ゴロのパスも、浮かせたクロスも、目標へ正確に届いた。
1点目は、FKで相手が意表をつく短いパスを使ったから、守備が乱れた。2点目は味方ボールを奪われてからの相手の展開であったとはいいながら、DFが間合いをつめ、自由なキックをさせないことが守りの基本で、こうした局面での個々の守備力をどこまで高められるかが、これこそジーコが望んでいるポイントのひとつだろう。
この後半の僅かの2分で、2ゴールを奪われたこと、こちらはこうした2分間を作れなかったことが、力の差であり、これを埋めるのが課題になる。
【得点できなかったが・・・】
もともと、相手との競り合いに強い鈴木が、欧州での経験でさらに、その特色をのばしたのはよいが、キープしてからのパスや、シュートへの持ってゆきかたは、これから・・・国内No1FWの高原は速さも強さも、このクラス相手にゆけるところをみせたが、まだアジャラやサムエル達のマークの中で、ゴールを奪うことはできなかった。
サポーターから大拍手を受けた中村はもちろん、中田(浩)、福西、小笠原達がそれぞれ力をみせて、このポジションの層の厚いことを示した。名良橋の右サイドは素晴らしく、余裕もあったが、右前の狭い角度からシュートを狙うことも必要だろう。
ジーコ体制の2回目の試合、ベテラン達のいいプレーは見た。この次は若手層の新しい魅力も見せてほしいと思う。
(写真はアルゼンチンがゴールを決めた後の場面/撮影:富越正秀)
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